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「もうどうしたらいいのかわかんないよ」
冷房が効いたマックで、わたしたちは駄弁っていた。
翠は先程からずっとネガティブな発言をしていて、終いにはポテトを食べる手が止まって机に突っ伏している。
わたしもまったく同じ気持ちだ。
「なんで聞かなかったの?巡の過去のこと」
「行く前は絶対聞こうと思ってたんだけどね、やっぱ聞けるわけないよー。だって巡くんわたしにずっと隠してたんでしょ?わたしがそのこと知ってたらどんな気持ちになっちゃうかなって」
「……翠はまだ、巡のこと好きなの?」
翠はゆっくり顔を上げて、横に傾け、若干顔を赤らめて小さく言った。
「……好き」
ますます、自分がどうすれば良いのかわからなくなる。友だちとして翠の恋を応援したい。でもそれと同時に、巡は霞をずっと好きなままでいてほしい。たとえ叶わぬ恋でも、それでもずっと思い続けることに意味はあるのだと、証明してほしい。
「え、翠?」
突然、背後から誰かの声が聞こえる。わたしは振り返ったが、見知らぬ人物だった。
見た感じ、女子大生2人組といったところだ。
「あ、美紀真子じゃん」
翠は感情の乗っていない声で答える。
「なんでここいんの?あんた」
「あーちょっとね、友だちに相談みたいな」
「翠が相談とかうけるー。悩みなんてないでしょーがあんた」
「まあ、うーん……」
2人組はお互いを見合わせて、鼻で笑うようにした。
なんとなく、不愉快な気分だ。
「まあいいや、うちら二人で遊び来たんよねー、じゃね、翠。美紀ほかんとこにしよ」
「そしよー」
それだけ言って、二人は入ってきたばかりのマックを出た。高い笑い声が聞こえた。
「誰?友だち?」
わたしは聞く。
「そだよー、3人グループ」
「え?いや、なんていうか」
少しの躊躇いの後、意を決して言う。
「フレネミーぽくない?さっきの人たち」
「フレネミー?」
「いや、今の1場面しか見てないからわからんけど、3人グループなら3人で遊び行かない?」
「まあたしかに……?」
翠はずっと、上の空だった。ので、わたしは話題を戻すことにした。翠が大学でいつもこんな扱いをされているのなら、誰にでも等しく優しい巡に惹かれる気持ちもわからなくはない、とわたしは同情した。
「まいーや。翠はさ、巡のどこが好きなの?」
意図はなく、ただの興味本位で聞いた。
「えっそれ聞いちゃう?」
「もったいぶんないでいーから教えてよ」
「うーん、顔がタイプなのと、あと優しいんだよね」
「あーね」
特に異論はなかった。というより、やっぱりそうか、と思った。
「なんかよく家まで送ってくれたり、車道側歩いてくれたり、わたしがやりたいって言ったこと大体やってくれるし、あとこの前カラオケ助けに来てくれたしね〜」
「ディズニーは行けなかったじゃん」
「大体って言った」
わたしは今まで、翠のように巡に引っかかった人を何人も見てきた。ただ翠が1番長続きというだけで。
「ていうか朔は?影のどこが好きなの?」
「えっ!?」
予想だにしない名前を聞いて、わたしはぎょっとする。すぐに顔が熱くなったのがわかった。
「いい加減認めた方がいいよ〜?」
「だからそんなんじゃないってほんとに」
「でもまだ写真いーっぱい残ってるんでしょ?」
反論できない。
「いーじゃん、影。いーと思うよ、いつから好きになったの?」
「んもー内緒!」
そう言ってわたしは机を軽く叩く。
「はーいいな、幼なじみに長年の片想い」
言って、翠は再び机に突っ伏す。
わたしはそれを見て、余ったポテトを口に運ぶ。
「今度、ちゃんと話すから。巡のこと」
わたしは囁くようにそう言った。
自分がどの立場をとればいいのかわからない。だからせめて、事実を伝えることはしようと、そう思ったのだった。




