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理解できなかった。二人がわたしを止める理由。それも、わたしは知らないで二人は知っている巡のこと。

「教えてよ、巡くんになんかあったの?」

二人は黙ったままだった。

「ねえ、言ってくんないとわかんないよ」

沈黙が流れた後に、朔が言葉を紡いだ。

「……あの、あんま、翠は嬉しくない話かもしんないし、巡に直接聞いた方がいいかも」

「俺はどうなっても知らないけど」

「ねえ言い方悪いよ影」

重い空気が流れる。わたしは激しく動揺していた。

「わたし、だいじょぶだから教えてよ」

まただんまり。巡の家を訪れる予定の時刻が近づいてきて、わたしはだんだん焦りを感じてきた。

「……じゃあ、ちょっとだけね、ほんとにちょっとだけ」

「やめろ」

「えっでもじゃあどうすれば」

「巡の方をどうにかする」

「いや、巡を?無理でしょ」

2人だけで会話を進めて、わたしは仲間はずれ。いい加減苛立ちが溜まり、わたしは声を大にして言った。

「言ってくんなきゃわかんないよ!」

二人は黙ってわたしの方を見る。

「巡くんに何があったのか知らないと、行けばいいのかどうか判断できない。話せる範囲でいいから教えてよ。……それに、仲間はずれみたいでなんかやだ」

朔は俯いてしまった。よほど都合の悪いことなのか、わたしは固唾を飲む。

影がその場にあぐらをかいて座り込む。

朔は影の方を見た。影は朔に向かって顎をしゃくった。

朔の緊張がこちらにも伝わる。朔はゆっくり口を開いて、わたしに告げた。

ーー次の朔の言葉に、わたしは衝撃を隠せなくなる。

「あのね、翠。巡はね、あのね、ずっと、好きだった子がいるの」

その言葉に、わたしは呆気にとられる。

「でもその子もう死んじゃってて、なんかその子のこと忘れられない、みたいな。なんか、そんな感じなの、巡」

わたしは朔の言葉を理解することを拒絶していて、呻き声のような言葉しか出てこない。

「ごめんね、ずっと言ってなくて。巡がいつか自分で翠に言うかと思ってて……ほんとごめん」

わたしはしばらく無言で立ち尽くしていた。すると、影が口を開く。

「どうすんの?」

わたしは虚無で思考が回らず、少しの時間差の後に、ゆっくり頷いた。

影はなにも言わなかった。

たしかに、今までの巡とのやりとりを遡って見れば、ところどころ不自然だった部分の合点がいく。以前影から巡はやめた方がいいという旨の指摘を受けたこと、巡が寝ぼけて誰かの名前を呼んでいたこと、朔がわたしと巡の好きなアーティストについて趣味が悪いと言っていたこと、巡の好きな女の子のタイプがやたら具体的だったこと。

それでもわたしは巡に会うべきだと思った。たとえ巡の瞳に映るのがわたしではなくその奥の過去の恋人だったとしても。伝えようと思っていたことは最後まで意思を曲げずに伝えるべきだと思うし、何より話さなきゃわからないことだってあるからだ。


朔の部屋を出る時、わたしは頭を下げて言った。

「ごめんね、二人ゲームするって言ってたのに空気悪くしちゃって。でも、ありがとね、教えてくれて。今日、巡くんに会ってちゃんと聞いてみる」

それだけ言って、足早にわたしは朔の部屋を出た。

エレベーターが下る間も、信号を待つ間も、ずっと鼓動が激しかった。今にも泣き出してしまいそうだった。

巡の家までの道のりが、いつもの倍くらい長く感じられた。

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