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ふわふわとした気分で、俺はテラスで健太たちと日向ぼっこをしていた。
「巡の好きな子どれ?」
「ん?ひみつー」
ここのテラスからだと、十分4組の教室が見える。霞は窓側の席で、霞の席の周りには友だちらしき女子生徒が何人か群がっていた。
「んだよノリ悪。じゃあヒント教えて」
「んー、言葉に表せない可愛さかなー」
「死ぬ」
そう言って健太や颯馬は笑う。
すると、ポケットの中のスマホが振動した。画面を見ると、霞からちょうど今LINEが来ていた。
『いいよ!』
俺が今朝、今日一緒に帰らないかと誘ったものに対しての返事だった。俺は4組を覗く。
窓際の天使が、笑って俺に小さく手を振ってくれた。
まさに心臓を射抜く天使そのものだった。
「え!お前今手振った!?」
「まじ!?どの子!?」
「もうおせーよ」
チャイムが鳴る。俺は質問攻めの健太や颯馬を軽くあしらいながら、教室へ戻って行った。
放課後は、俺にとってご褒美だ。
「何かほしいのある?」
「えっ巡くんUFOキャッチャーできるの!?」
霞がキラキラした目で俺を見つめてくる。そんな顔をされたら、いくらだってこのアームに費やせるだろう、そう思った。
「俺結構得意なんだよね。取ってあげるよ」
事実とは裏腹なことをつい言ってしまう。
「えーやった!うーんじゃあ、ディズニー系がいいな」
「ディズニー好きなん?」
「うん、めっちゃ好き!3ヶ月おきにディズニー行きたくなる」
そう言って霞は笑う。
「じゃあさ、今度ディズニー行こうよ」
俺は勢いでそう言った。
「えっディズニー?」
「あっ、うん!もし霞がよかったらだけど、まあ、よければ二人で……」
だんだん声が小さくなる。返事が来るまでの数秒が、永遠のように思えて生きた心地がしなかった。が、霞は迷わずに「いいよ!行こ!」と言ってくれた。
その笑顔がこの上なく嬉しくて、俺は心臓が締め付けられるような幸福感を味わう。
「まじ?った……!」
今までがんばって生きてきてよかったと思える時間だった。
日が沈む頃、俺たちは電車に乗って帰路についていた。霞は中型犬サイズのマリーちゃんのぬいぐるみを持っており、その姿がただただ愛おしくて、俺がこれに何千円もかけたことを忘れるくらいだった。
「ディズニー行く時、この子連れてくるね」
霞は上目遣いで笑った。
それから霞の最寄りに着いて、俺は手を振る。
じゃあね、また明日と俺は言った……んだっけ?あれ、違ったか?たしか、ばいばい?ん?……俺、なんて言ったんだっけ。この後は、たしか、えーっと……
耳の奥で、アラームの音が聞こえた。枕元が軽く振動しており、重たい瞼を開くと、左にスマホと熊のぬいぐるみが置いてある。
スマホの時刻と日付を確認する。
ああそっか、今日は翠がうちに来る日か。
天国のような夢から現実へ、霞との記憶を覚えていたことだけが、今は救いだった。




