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チャイムの音が鳴って、出てきたのは目当ての人物ではなかった。
巡よりは背が低く、黒い前髪が目にかかるくらいまで伸びていて、真っ黒のジャージを来た男だった。
「あ……」
わたしは思わず声を漏らす。
「巡に何か用ですか?」
男はそう言った。
「あ、あのっ、巡さんに借りたものを返したくて」
動揺しつつ、わたしは返す。
すると男はしばらく沈黙し、「上がっていいよ」と言ってわたしを部屋へ招き入れた。
部屋の中は以前に来た時よりも片付いていて、思っていたよりも広かったことに気づく。ただソファの上に昨日の服のまま寝ている巡を発見して、わたしはぎょっとした。
「えっちょ、巡くんだいじょぶ!?」
巡に近寄って肩を揺さぶると、その腕の中の熊のぬいぐるみに気がつく。
「ええ……」
「何返しに来たんですか」
男が聞くと、わたしは「昨日ハンカチ借りて」と返す。
「ついでに部屋片付けるの手伝ってください」
「ええっ!」
男の思わぬ提案に、わたしは声をあげる。
巡が何か寝言を言ったのが聞こえたが、意識はないみたいだ。
ため息を吐いて、わたしは聞いた。
「あの、あなたは巡さんとどういった関係で……?」
男は少しの沈黙の後、「友だちです」と答えた。
わたしは何と名乗ろうか迷ったが、まだ巡との関係には名前がないので、何も言わないでおいた。




