16
突然スマホが鳴って、誰かから電話がかかってきているのに気づいた。番号はうっすらと見覚えがあるような気がしたが、誰のものだったかは覚えていない。
普段電話が鳴ることはほとんどないので、俺は警戒する。
しばらくして、スマホの振動は止まった。
俺は筋トレを再開しようと思ったが、それもつかの間、またスマホは鳴り出した。先程と同じ番号である。
記憶を辿り番号の人物を思い出そうとしたが、無理だった。ので、少し迷った末、俺は仕方なく電話に出ることにした。
「もしもし」
次に聞こえたのは、自分がこの世で最も嫌悪している人の声だった。
『……影?』
「なに」
俺は唸るように答える。
『あっ、えっとね、最後あんな別れ方しちゃったけど、お母さん、影に伝えたいことがあって』
「忙しい」
『あっごめんね、えっとね、あの、影、最近はどう?ちゃんと生活できてる?その、暴力とか、もうしてない?』
「そういうのいいんだよ」
『あっ、ごめんね』
俺の母親は、最後に会った時よりもやけにしおらしかった。あの男とはもう関係を切ったのだろうか。
『あのね、ほら、そろそろたぶん影高校三年生になったでしょ?それでね、その、大学とか、どうするのかなって。あっほら、今通ってる高校もちょっと普通じゃないじゃない?だからお母さん、心配になってきちゃって。ああ今さらなんなんだとか、ここに来て急に申し訳ないとか思ってるけど、でもやっぱ、影は私の子だから……影?聞いてる?』
「聞いてるよ」
俺は怒り口調で即答した。
「俺もうガキじゃねえから。別にあんたなんかいなくても一人でやれるからもう電話してこないで」
『そんな……そんなこと言わないでよ。ねえ大学は?大学はどうするの?もう決めたの?勉強は?』
「黙れよ。うるせえよ干渉してくんな。何今更母親ヅラしてんだよ。あれだろ?あの男と別れたんだろ?」
そう言った途端、母は意を突かれたかのように言葉に詰まった。俺は母が反論してこないうちに、電話を切る。苛立ちでスマホを投げようとしたが、ちょうどその時1件のLINEが入った。開くと、朔から1枚のラーメンの写真が送られてきていた。




