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何度目だろうか。
俺は今日もまた、玄関でばたりと倒れ込み目を瞑る。影が何か言ったが何も聞こえず、終いにはドアが閉まる振動だけが伝わった。しばらく倒れたままの体勢を維持し、少し経って部屋の中へ入る。ソファの上に熊のぬいぐるみが置いてあった。
俺はそれをただ抱きしめて今度はソファの上に倒れ込む。
「なんでいないんだよ」
ぼそっと呟く。いつもこの時間なら確実に霞は俺のとこに来てくれるはずだ。今日はなぜ。
ただずっと、ぬいぐるみを強く抱きしめる。
まるで霞を抱きしめているかのように、強く、強く。
そんなふうに考えていたら段々照れてきて、少しぬいぐるみと距離をとった。
彼女にはずっと、好きの2文字を伝えられていない。
何度も口に出そうとしたがその度に次の機会を、と後回しにしてきた。そのツケがこれだ。あまりにも虚しすぎる。
俺は再びぬいぐるみを抱きしめた。涙は溢れて止まらなく、ただひたすら今孤独で有ることが寂しかった。誰かそばにいてほしい。霞がいない現実を一人で生きることができない。全身が熱くなって、ぬいぐるみの頭や手、足、尻尾に触れる。目を瞑って、頭の中では霞を思い浮かべる。段々息が荒くなって、ぬいぐるみの頭が潰れるくらいに強く握る。ソファが軋む音が微かに聞こえた。
「……っ、っはぁ……ふぅ……」
呼吸が収まって、頭が冷えてくる。びりびりとした感覚が過ぎた後、自分が抱きしめているのが無機質なぬいぐるみであることに気づいて、俺の乾いた目からは涙も出てこなかった。
影の言った通りだ。俺はこれをあと何年続けるのだろう。




