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20XX年 8月某日 ギン子の見た夢
な、な、なんでこんなことになってるのよぉ!
彼女は、小刻みに震えながら、しきりに臭いを嗅いでくる大きな狼の前に、なすすべを持たなかった。
今までの記憶が、全然ないという事も、彼女を混乱させていた。
なぜ、こんなコンクリートの部屋に、いるんだろう。
なぜ、私は下着姿なんだろう。
なぜ、こんな大きな獣に、今にも殺されそうになっているんだろう。
すでに、彼女の自我は崩壊寸前だった。
自我抵抗出来なければ、心が闇の眷属によって汚染され、身体がその禍々しい力によって侵喰される。
全身がそうやって恐怖と絶望に染め上げられてしまえば。
闇の眷属の思うがままとなり、この世界に闇をもたらす血肉と、力と、邪魂と化してしまうというのに。
しかし、そんな事を知る由など、彼女には無かった。
なぜなら、人狼とは、古来より人族の天敵であるから。
彼らが巧みに闇に紛れ、人ごみに隠れ、夜な夜な人族を襲う存在であると気付くことなど、到底無理な話であろう。
だがもし、彼女が気付いたとしても。
彼女は、人狼に立ち向かう術を、何ひとつ持ってなどいないのである。




