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56.シンユーの独白

side:シンユー



私は……

こうするしかないんだ。


_夜白龍鳴失踪の翌日_



チン・シャオドン連邦支部長に呼び出された。何用だろうか。


やたら豪華な扉の支部長部屋に入る。

ここは支部長の趣味で贅が尽くされている。私としてはあんまり好きではないが。

どっぷり太ってしまったチン支部長は今では欲に溺れている。

昔は尊敬出来る人だったのだが…


「よく来たな、シンユー!」


「支部長、どうしました?」


「シンユーよ。ワシはな、ワシはな、ここの支部長だけで終わってもよかったのだよ。」


そういえば、もう少しで定年だったはず。BSFの定年は一般的な所と同じ、65歳だ。しかしながら、適合者の寿命は倍と言っていい。戦闘の全盛期は65くらいかもしれないが、100歳を過ぎても肉体年齢は一般人の50歳くらいだろう。


「そうなんですか」


「でもなぁー、定年後の楽しみをぶち壊したやつがおったんよ。ムカやつはどうにも出来んかったが...ついに、ワシに運が向いてきた!!

ふっふっふ、あの場所は壊れてしまったが、ワシの楽園を創るのだ」


...この言い方、やはりあの噂は本当だったのか!?定年後の秘密の楽園。【ユートピア】と呼ばれていた場所があったと。そこは豪華客船の上、BSFの重役を務めていたものの一部が、定年後に身を寄せる場所。美女達を権力や金で釣り、最後には本人の意志などを無視して接客させる。支配者達は年老いても適合者であるものだ。

一般人は太刀打ち出来ず、逆らうことは許されない。

一度でも行けば二度と無事では出ることの出来ない、支配者以外には地獄の場所。

欲にまみれた支配者たちはそこでは何にも縛られず、自由に欲望の限りを尽くしているらしい。

そこは想像を絶するほど、おぞましい場所らしい。

ユートピアは伏せられており、次に支配者に加わる予定のものが重役を務めて資金なども完了しているため、秘匿性も高く、その存在はごく1部の噂程度のもの。


しかし、この噂が2年程前に上書きされた。夜白龍鳴によって、【ユートピア】は崩壊したと。関係者は全て殺害され、囚われたもの達は全員救助されたと。


我々のような、歴の長いもの、重役レベルでしか知らない噂だ。


だが、この目の前の男からは、それが事実だと、そう感じるものがある。


「さて、シンユーよ、ワシらと共にこの連邦をユートピアする気はないかね?」


「...聞かせてください。そのユートピアはどのような所でしょうか!?」


無理だと思いつつも、確認する。


「噂くらいは知っているだろう?定年後に思う存分これまでの貢献に対する報酬を頂ける場所を。そこと似たようなものだ」


「非合法なこと……、人権などは考慮されているのですか?」


「お主も知っておるだろ?ワシの兄は政府高官だ。法律が変われば合法だぞ?ワシもやってみたかったんだよ。ワシ好みの女を奴隷として飼い慣らすの。」

ニヤニヤと下卑た笑い方で話すそれは、容易におぞましい想像をさせる。


「...そのような法律変更が成立する訳が無いです!」


「連邦軍を適合者として、戦力を増強。適合者が支配する独自国家となるのだよ。もちろん、ワシらがトップでな」


「本気ですか??」


「本気だよ、既に準備もしている」

真面目な顔になり、たんたんと告げられる。


「っ!?チン支部長。BSF規約違反容疑として拘束します!」


「生真面目なヤツめ。チュインシー!!」


チン支部長が名を叫ぶと、レベル7であるチュインシーが奥の部屋からでてくる。


「何故お前が!?」

半ば分かりきった質問だったが、言わずにはいられなかった。


「シンユーさんなら既にお気付きでしょ?私も支配側になりたいんですよ!」


「そうか...、ならば貴様もまとめて拘束する」


ランキング23位と元レベル7の2名が相手だが、私なら問題ない。直ぐに終わるだろう。

踏み込もうとした瞬間だった。


「これを見ろ!!」


見せられたパソコンのモニターには私の妻と9歳になる娘メイリンが写っていた。


「こ、これは!?」


ニヤリと笑いながら、チン支部長が話す。

「もちろん、ライブ映像だ。ワシからの定期連絡がなければお主は家族を失うことになる」


写っているのはリビングのような場所。しかし、うちの家ではない、知らない場所だ。


「もちろん、君がワシに協力してくれるのであれば、彼女達の安全は保証しよう。ワシの命令は絶対じゃぞ?」


卑劣な...

俺の妻はレベル6だ。そんな簡単に連れ去ることは出来ないはず。

くそッ!だからチェインシーか!!

睨み付けると奴は1歩後ずさるが、強気で話してくる。


「シンユーさん。あんたが命令さえ聞いていれば家族は無事ですよ」


「っ!貴様!」


「おいおい、シンユー、君には選択肢があるのか?」


「本当に無事は保証してくれるんだろうな」


「あぁ、電話するといい。協力してくれるのであればな。ただし、ある程度安定するまでは会わせんぞ?裏切られても困るからな。余計な事をすればどうなるか分かるな!?」


私の最も大切なのは妻とメイリンだ。それは揺るがない...


「…………分かった。協力する。」


「そうそう、それでいいのだよ」


すみません、総長。

私にはこの状況を打開する術が思いつきません。







スコープから視線を外す。


「はっはー!!ヘッドショットじゃー!!」


隣で、ユウロンが喜んでいる。こいつは自らチン支部長に賛同したらしい。

積極的に戦闘に参加している。佐々木(和也)君が死んでしまった。

この距離で、専用にカスタマイズされたスナイパーライフルに専用弾丸。

ここ数週間練習させられた。ほぼ確実に狙えるようになったが、練習中からワザと外していたからバレていないだろう。

ユウロンは自分が上手いと思っているはずだ。


「ひひっ、1人削れたか!アリス・ミスカは腕か、まぁ、いい。次は東だ!

急げ!!」


チン支部長に催促される。不意打ちじゃなければ、レベル7には当たらない。警戒されたらまずいので通信よりもすでに発砲準備してある東側へ行き、東軍のBSFへ向かって打つ。


「くぅー!肩だー!!」


「俺は足でした!やっぱユウロンさん上手いですわ!」


「そうだろー!?」


「はいはい、君たち、盛り上がってないで次の作戦だよ!西が来る前に東側倒しちゃってよ!!」


「了解だー」

「「了解」」


「シンユー!分かってるな?」


味方とは戦いたくなんてない...

でも、チン支部長に監視されているせいで下手なことは出来ない。元レベル7だから生半可なことは見破られるだろう。

下手な事をして2人になにかされる訳には行かない。


くそッ!

既に総長と戦って取り返しのつかないことなっている。私は家族を守ろう。

「分かってます!」


私は東軍へ向け出撃する。

少しでも面白いと思って頂けれれば、

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