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43.あの名前

私が有利と踏んだ近接戦闘。

だけど、グエンさんを押し切れない。

炎を常に纏っているグエンさんの剣は私の得意な氷での絡め手が通じない。

身体の動きの妨害も、距離を離さないように壁を作ってからは、炎を身体にまで纏ったりするため、上手く機能出来ていない。


炎でブーストさせた回し蹴りをしゃがんで回避する。手を床に着いて、【氷華】をグエンさんの後ろから生成する。

咲き誇る氷の華はグエンさんにその鋭利な花弁が向かう。


するとグエンさんの背中から炎が羽根のように広がり花弁を溶かす。

なんて熱量だ...

熱気だけで、肌が焼けるようだ。


氷のバリアを作って和らげなければこの距離にいるのも辛い。

さすが、長らくBSFを支えてきた重鎮だ。


だが、そろそろ世代交代してもらおう。


「はぁぁああ!!」

グエンさんの周りに【氷華】を後ろ、左右に再び展開する。まずは周囲の気温を下げる。

おそらく気温を下げないと、グエンさん近くの氷の生成は安定しない。


正面から刀を横に一閃する、が、グエンさんには当然止められる。

だが、それはあくまで囮だ。

すぐさま左手で逆手に持った氷刀を振り抜く。たった今、振りながら創り出した氷刀だ。意識外だったはず。


「っ!?ぐっ!」


グエンさんの脇腹に氷刀がヒットする。もちろん刃は尖らせていないが、鈍器で殴られたようなものだ。

グエンさんが片膝をついて、大きい隙が出来る。

ここだ!

右手の刀を振り下ろそうとするが、至近距離で火炎ビームが4本飛んでくる。

特訓中に隊長の言っていた通りだ。


【「戦闘慣れしているやつが相手の時は、気を抜くな!最後の一撃、そんな気の緩みで簡単にひっくり返されるぞ!

今回の相手はグエンさんだからな、宣言されるまで油断はするなよ!」】


油断はしていない。

最後まで反撃は想定している。

直ぐに右の【氷華】を崩してそちら側に躱して、刀を振り降ろす。


ドカッ!!

刀が止められる。


「そこまで!!」

隊長の刀が私の刀を止めていた。

模擬戦用の木刀に衝撃吸収剤をつけたものだが、私たちの力で振るえば、危険なものだ。

正直、手加減とか出来るレベルではないので夢中になっていた。


「勝者、アリス!」

隊長が宣言してくれる。


「フゥ〜」

早くなっている心臓の音が自分でもわかる。思っている以上に疲労していた。

連続行使したツケかな。じゃなきゃ、勝てなかったけど。


〈すっげー戦いだった!〉

〈おめでとー〉

〈スゴすぎてコメント忘れてたわ〉

〈動き早すぎなんだが〉

〈炎や氷が出現してた〉

〈炎のビーム私もやりたい〉

〈あんな事も出来るんだ。訓練しなきゃ〉

〈ん?もしや、他のBSFの人も観てる?〉

〈あとでスローおねしゃす!〉



「ランキング戦、第2位!ついに決着しました!勝者はアリス!第2位が変わります!アリス・ミスカ・マイルズが第2位となります!!」


シャルルの実況が聞こえる。

戦闘中は集中し過ぎてなにも聞こえていなかったけど、ようやく落ち着いてきた。


「アリス、強くなったな!」

隊長が褒めてくれる。そのまま隊長とグータッチをすると、嬉しさがドンドン込み上げてくる。


「はいっ!ありがとうございます!」

思わず笑みがこぼれる。



〈いや、この笑顔可愛いすぎな〉

〈守りたいこの笑顔〉

〈守ってもらうの間違い〉



「長らく変わらなかったTOP2が…

ランキングがまた1つ変わりました!この後、インタビューもあるので皆さん少しお待ちくださいね」


あー、試合の後、インタビューするって言ってたね。

そうでした、そうでした。

なかなか疲労してるけど、気持ちは達成感を感じつつ、控え室の方に向かう。



______________

side:シャルル


「いやー、凄い試合でしたね」


「うん、正直、ここ数日は訓練みてなかったんだけど、また強くなってるねー!」


「アリスちゃんが最後に使ってた、あの氷の花みたいなやつは何なんですか?」


「あれは【氷華(ひょうか)】って言って、一瞬で花のような氷を作り出す技だね。あの花の花弁部分は切れ味鋭くなっていて、中心部ほど、固く細かいんだ。そもそも1個造るのでも十分な大技なんだけどね。同時に3個も同時に造れるのがアリスの凄い所だね。」


〈アリスちゃんカッコ可愛い〉

〈さすが氷姫やー〉

〈氷系統最強ー〉


「そうなんですね!やっぱりあの部分だけでも高度なことをしていたんですね!対するグエン隊長、惜しくも敗れてしまいましたが、マリーさん、あのビームは驚異的でしたね」


「そうですね、結果は残念ですが、アリスさんが純粋に強かったですね。あの火炎のビーム状の攻撃は発動までも早く、容易に躱すことが出来ないものなのですがね。」


「あの攻撃は技名とかないんです?」


「あれはー、特にないんじゃないですかね……聞いた事ないです」


「この際だから命名しましょうよ!グエンさんももうすぐいらっしゃると思いますし。視聴者の皆さんは何か良い呼び方ありますかね。」


〈シャルルちゃんはとりあえず名前つけたいんだな〉

〈厨二かな?〉

〈火炎線〉

〈火炎ビーム〉

〈火柱・極細〉

〈極細ポッキー〉

〈デスビーム〉

〈ラディカルビーム〉


「おうおう、なんか面白いことになっているね」


「グエンさん!?」

実況部屋と化した部屋にグエン隊長が来たようだ。


「い、いやー、グエンさんの炎のビームの技名を考えてたんですよ」


「それがこの候補か……

あれな、一応、技名あるぞ!?」


「え!?そうなんですか!?」

「えっ?」


マリーさんまでも驚いている。初出し情報か!配信としては美味しいかも!


「ぜひぜひ、教えてください!!」


「私も師匠から引き継いだんだがな、あの技は【赫灼線(かくしゃくせん)】という」


「かくしゃくせん?……カッコイイ!!」


〈大喜利大会終了のお知らせ〉

〈ちゃんとした名前だった〉

〈まともやんけ!〉



「グエン隊長の師匠は気になりますねぇー」


「もう、とっくに引退している人だよ」


「さっきの【赫灼線】はその方から受け継がれた技なんですね!」


「そうだね、多少アレンジしてるけどベースはそうだね。」


「それにしても凄い連射、熱気がこちらまで伝わってきました」


「連射性能は高いし、バグズを貫通出来る威力を秘めているからね。アリスには躱されたけど、強力な技だよ」


「アリスちゃんと戦ってみてどうでした?」


「いやー、昔から知っているけどね、とても強くなったよ。技の使い方、身体能力、どれをとっても素晴らしいね。彼女がどこまで強くなるのか楽しみだし、私も改めて鍛え直そうと思ったね」


「大絶賛ですね。それだけアリスちゃんが強くなっていたんですね。」


ちょうど、話ている所で、新、第2位が扉を開けて入ってくる。

「お、噂をすればアリスちゃんも来たようですね」



ご覧いただきありがとうございます。

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