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33.模擬戦

「それじゃ、次の試合をやろうか」

隊長の号令で準備を始める。

隊長と私、栗谷さんを残してみんなが移動した。

私と栗谷さんも距離を開けて対峙する。栗谷隊長の得意系統は風だ。見えにくい、躱しにくいで厄介だと言われている。


「ふぅ、先日の戦闘を見てる身としては、最初から全力でやらせてもらうよ」

「ええ、私もそのつもりです」


栗谷さんが木刀を正面に構え、腰を落とす。

私も軽く腰を落として直ぐに動けるように構える。


「それでは……始め!!」


栗谷さんは動かないが、見えない風が来ているのを感じる。目の前に氷壁を生成して、私も飛び上がる。

氷壁にヒビが入るほどの衝撃が走り、風が吹く。

やっぱり開幕、不可視の衝撃波が飛んできていた。

風はこれだからやりにくいのだ。

先程の氷壁上面に踏み込み用の氷を生成して、斜め上から栗谷さんに肉薄する。


横薙ぎに振るった木刀は栗谷さんの木刀に阻まれ止まってしまう。結構な勢いをつけたのだが、栗谷さんは3mくらい下がっただけだった。


風で勢い殺したのかな!?

直ぐに氷のつぶてを20個ほど生成して追撃する。

「ふんッ!」

栗谷さんは気合いと共に木刀を振り下ろす。木刀を中心に風の刃が飛んでくるはず。

私は左側周り混むように走る。

先程の氷のつぶてがほとんど撃ち落とされてしまった。

さすがだ、牽制にしかならない。

周り込ながら更に氷のつぶてを生成して打ち出す。

栗谷さんも走り始め、私が追う形となった。


______________

side:栗谷


いや、反応早すぎないか?

風だから見えてないよな!?

この…氷弾もっ……1個1個が硬いんだよ。しっかり風を練って繰り出さないと弾けない。躱しながらじゃないと迎撃しきれないな。生成が早すぎて全部は無理だ。

しかも、極めつけはさっきの一振り。

そんな見た目でめっちゃ重い一撃放つじゃん。

ガード越しに吹っ飛ばされた。エアクッションを背後に展開してなかったら多分壁まで吹き飛んだぞ!?

強いのは理解していたが、こんなに違うとは…


ッ!?危ねぇ!?氷弾を捌ききれず脇腹を掠める。

先を尖らせてないみたいだけど、あれを食らえばこの試合は終わりだ。

それだけの威力は充分に秘めている。

それにこっちは能力も使って動いているのに、向こうは素のスピードでピッタリ追いかけてくるのやめて欲しい。


遠距離じゃジリ貧だし、このままじゃいずれ捕まるな…

距離を詰めて反応が鈍くなる風で隙をつくる。

相変わらず狙いの正確な氷弾が飛んでくるため、ジグザグに、不規則に移動しながら、訓練場の壁付近へいく。

壁に到達した瞬間に大きく跳躍し、壁を足場として両足で屈んでタメをつくる。

風音(かざね)

全力で踏み込み、風を操り進行方向の真空化、背後の圧力上昇を同時に行い超加速する風系統の技だ。

各系統で最も早い技と言われ、レベル7でも上位のものでなければ出来ない風系統最強の技。


俺の全力でアリスに肉薄し、スピードにのせた一閃を放つ。

ガンッ!!

木刀同士がぶつかり大きな音がなり響く。

くッ!?ガードされた…

木刀を引き戻そうとして、引っ張るが動かない。よく見ると木刀同士が氷でくっついている。力を強めるが割れない。気付くとアリスの蹴りが目の前にあり、慌てて仰け反って回避する。

能力を使って後ろに飛ぼうとしたが、飛べない。疑問に思った瞬間に脇腹に衝撃を感じ、吹き飛ばされる。


「ゲホッゲホッ!」

壁にぶつかる寸前にエアクッションをしたが、どうやら蹴られた脇腹が痛い。飛ばされた方を見るがアリスがいない!?

「そこまで!」

見るとすぐ頭上にアリスがいた。壁に足を氷でくっついけて立っているようで、木刀を振りかぶっている。

「ゲホッ!さすが氷姫…完敗です」


アリスが壁を蹴って飛び降りてくる。

「大丈夫ですか?結構思いっきり蹴っちゃいました」

「痛みますが、大丈夫ですよ、模擬戦なんだから。

いやー、しかし、まさか【風音】をあんなしっかり受け止められるとは思わなかったよ」

「対タイプ:δとして、隊長に速さに対する対応は叩き込まれてますからね。むしろ、対処出来るまで特訓した感じです」

零番隊はそんな訓練してるのか!?

まぁ、あの隊長ならやるか…

「誰が何したってー!?」

ッ!?

「た、隊長!?隊長に特訓つけてもらったって話ですよ!」

ビビったー!音とかなんもしなかったじゃん!?

「これからみんなで特訓だぞー」

そうだった!?

ちょっと怖くなってきたな……

「はーい、少し早いがみんな13時まで休憩して、また集まってくれー!」

「了解です!」「了解」


「隊長ー、今日のお昼はなににするんです?」

「ん?んー、カツカレー定食にしようかな」

「あ、私もカレーにします!」

「よーし、みんなで食堂いくか!」

「はい!」

零番隊は結構仲良いんだな…

みんな同年代だもんな…

おじさんには眩しいなぁ。

「良かったら、栗谷さんも食堂行きましょう!?今なら、零番隊用の個室ですよ!」

「え!?」

零番隊個室なの?そういえば食堂で見た事がない!

「零番隊って個室だったのか!?」

「ええ、時間が不規則なため、専用になってます。時間帯によっては、品数は選べませんが!」

「通りで、同じ本部なのに食堂で会わないわけか」

「そんなに広くありませんけどね」

「充分だろう?是非ご一緒させてくれ」

「はい!」


_


なんだこれ?

個室とは聞いていたが、楽屋みたいな感じじゃないか!

案内された零番隊建屋内の食堂は20畳くらいの四角い部屋はテーブルと椅子、畳スペースまである。

畳側のテレビにはゲーム機まで見える。

「すっげー!」

「こ、これが格差!?」

「すげぇな」

「零番隊ってやっぱり凄いですね」

各々感想をこぼす。

「うちの隊長はこうゆうの好きなんで、ゲームや漫画は全部隊長の私物なんだぞ」

アレンが鍵の形の剣をもった人物が描かれたポスターをトントンとしながら告げる。

確かに、本棚には各種俺も知ってる有名な漫画から全く知らないものまで、たくさん並んでいた。

温泉施設のリラックスルームのような空間だ。

「休む時は休む!それがモットーです」

「なるほど!」

思わず感心する。

「いやー、隊長はオンオフはっきりしてるからねー。仕事モードが切れるとダラけきってるもんね!」

「え?夜白隊長が!?」

会議とかでも真面目だし、強さでも右に出る物のいない。そんな夜白隊長が!?

想像つかない。

「ダラけてるは言い過ぎだけど……えっと、なんとゆうか……完全にオフって感じですね。

たぶん直ぐに分かりますよん」

七瀬オペレーターの言葉は本当に直ぐに分かった。


夜白隊長はカツカレーを食べながら、タブレットで漫画を読んでいる。ちょっとニヤつきながら……

ご覧いただきありがとうございます。

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