26.【少年】
タイプ:δと私達の間に、少年が立っていた。
以前、ママのランキング戦の時に会った、黒髪の少年だ。
日本刀型のおそらく高周波ブレードを持っているが、かなり長い。背丈ほどの刀、もう、太刀だろうか?を背負っている。背は私とそんなに変わらない程度だが、見慣れた私達の隊服によく似ているが、ところどころに赤い差し色が施された、隊服を着ている。
隊長
少年はタイプ:δを確認し、周囲をゆっくりと確認する。
「……………」
少年がメイさんを見て動揺したように見えた。
「……間に合わなかった…最速だったのに…
……
遅れて申し訳ない。」
あの少年はあろうことか、δから目を離し、こちらに頭を下げた。凄く、悲しそうな顔をしている。
「もう、大丈夫です」
とても優しい声だった。こんなにもδの殺気を剥けられているのに、たった1人、今1番警戒され殺気を剥けられているであろう人が、このプレッシャーなんかないかのように、自然だった。
「お、お主、なぜ…?あの計画はまだ…」
「まだ試験段階だったのですが、かなりの出現だったので、試験運用として出撃しました。」
オヤジは何か知ってるようだが、なんにせよ増援のようだ。
確かに強そうだが、私と歳もそんなに変わらない少年が増えたところで、だ…
多めに見積もってレベル7だとしても、こちらで太刀打ち出来るレベル7は手負いのオヤジとローガンさんしかもういない。
もっと増援が欲しいところだ。
「ギシギシギシギシ」
無視されている事に、痺れを切らしたのか、δが不快な音をだす。
「ちょっと待っててください」
こちらにそう言うと、少年は太刀と呼べそうな長さの日本刀を鞘から取り出し、鞘は丁寧にそっと傍に置いた。
δの方は警戒しているように見える。
「お前がやったんだな…、
許さねぇ」
刀をδに向けて宣言する。
意味が分かったのか分からないが、δの姿がブレて消える。
全て追えないが、δの腕が6本全部ブレて見える。きっと攻撃しているんだろう…と思ったら、気が付いた時には少年は刀を振り抜いた姿勢をしていて、δの腕が全て切り落とされていた。
「ギシ!?」
δも理解出来ていないらしい。
少年が1歩近付くと、δも1歩下がった。
「バグズも恐怖とか感じるのか?それとも反射的な反応か?まぁ、いいや、どうせやることは同じだし…」
δが後方に逃げた…が、少年が速い。動きがハッキリ見えないが、既に蹴り倒して、踏みつけている。
メキッ!
あの、硬い甲殻が踏みつけられて軋んでいる。
「はぁ、クソ野郎が…」
更に右手がブレたと思ったらδの首が落とされた。
簡単に倒してしまった。
なんなんだ?
こんなにも一方的に!?タイプ:δだったよな!?
オヤジより圧倒的に強いぞ?戦わなくても分かる差がある。
あのタイプ:δは正真正銘のδだった。最初に出てきたδと同じ強さをしていたはずだ。メイさんのあの氷の凄い攻撃をものともしない、強さだったんだぞ。
「気持ちが追いつかんわい」
オヤジも同じらしい。
ママを失って、悲しくなっていたら、また絶望的な状況で自分も死ぬ覚悟をしたら、少年が現れてあっさりと倒してしまった。
「れ、レイモンド隊長…、彼はなんなんですか!?」
ローガンさんも気になるようだ。
「む?やつは夜白龍鳴、夜白家の跡取りじゃ」
「夜白家…日本の名家ですね。とゆうことは、夜白龍鳳の息子ということですか」
「そうじゃな」
「それでも、あの強さは…」
「あぁ、既に、もう完全にオヤジを超えとるのぉ」
「尋常じゃない強さしてますよ…
なんですか、あれ!?はははッ!もう、嫉妬どころか、感情がぐちゃぐちゃで笑えてきます」
「あんな強さじゃから、何かあった時に本部から各支部へ応援に駆けつける部隊として、検討中だったのじゃ」
「……おかげで助かったんですが、もっと早くと思ってしまうのは贅沢でしょうか……」
「…それは、ワシも思ってしまうのぉ………、
彼には悪いと分かっとるのじゃがな…」
私も…思う…
もっと早く来てくれれば、メイさんは助かった。
もっと早く来てくれればママも助かった。
もっと早く来てくれれば……そう思うのは私が助かったからなのだろう。
彼も凄く悲しそうな顔してた…、きっと同じ気持ちなんだろ。
私が彼くらい強ければそれでも良かったのだから。
「えっと、すいません、地上は大丈夫なのでホールの安全確認してきます。皆さんは医療班呼んで貰えます?」
夜白龍鳴くんはそう、何気ない感じで聞いてくる。
「う、うむ、気を付けるんじゃぞ」
「はい」
……
「サラ、医療班を頼む」
「はい!すぐに!」
こうしてヨーロッパ大侵攻はタイプ:α 42体、タイプ:β 1体、タイプ:γ 2体、タイプ:δ 2体という大量のバグズの襲撃に隊員の犠牲を出しつつも終息した。
δが2体も出現したことは、BSF全体に衝撃を与えた。
また、タイプ:δを単独で倒す、夜白龍鳴の名と遊撃運用が正式発表されるのは必然だった。
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