25.【私は生きる】
side:レイモンド
タイプ:δは少し距離を置いてこちらを観察している。
ワシもあばら何本かと右足が折れとる用じゃ。
さっきよりも動きに支障がでるのぉ…
δの動きは早いが、腕が1本ならローガンと2人がかりでなんとかいけるか?
そこまで考えた時、δは動き始めた。ワシとは反対、アリス達の方に…
_______________
タイプ:δは任せて必死に目の前のバグズクラフトを倒す。さっきのδに比べたら、タイプ:αは硬くて面倒なだけで、雑魚に感じるが、数が多い…
必死で倒す。
右からの腕をバックステップで躱して、脚裏にスパイク状に氷を生成して、急停止、前に素早く踏み込んで首を落とす。
αの動きであればもうよく見える。以前よりよく見えるようになった気がする。
「後2体だ!」
ラーズ先輩が叫ぶ。
私から右にいるバグズまで移動して、ラーズ先輩が前方で抑えた瞬時に後ろから突き刺す。
「ギシャ!?」
こちらに気を取られたバグズに先輩がトドメをさす。
ドンッ!!!
近くにいたタイプ:αの死骸が吹き飛び、機銃部隊の車両にぶつかる。
αの死骸を吹き飛ばしたのは、ラーズ先輩だった。
それもお腹が破裂している…
さっきまでラーズ先輩がたっていた所には、タイプ:δが立っている。腕が1本しかないが、そのプレッシャーは変わらない…
δの8つある目が、こちらをみた気がした。
咄嗟に氷を目の前に全力で生成する。
「グッ!?」
お腹に衝撃が走り、吹き飛ばされる。
肺の空気を全て強制的に吐き出され、息が苦しい。お腹が痛い。骨がやられたかも…
「大丈夫ですか?」
気付いたら、機銃部隊の直ぐ近くまで飛ばされていたようだ。
「は、はい…」
「あいつはッ……」
顔を上げるともうそこに機銃部隊兵の顔はなく、後頭部から突き刺さったδの腕になっていた。
「くそッ!」
全力で氷を生成する。動きに対応出来ないのなら範囲優先で氷の槍を大量に地表から奴目掛けて斜めに作りだす。これでやつが私の方に進むと自分で槍に刺さるはず…
パキンッ!
一応、牽制になったようで、ゆっくり近付いてくるが…
パキンッ!
私の氷の槍が刺さっていない。甲殻に阻まれて氷が割れてしまっている。
刀を握り締める…
やれるか分からない、だが、やらなきゃ死ぬ。
落ち着け、私。
オヤジの真似をして氷の鎧を生成する。メイルと篭手を生成する。硬さ重視で今できる精一杯で作る。関節の可動を考えるほどの鎧は難しくて作れない。
意を決して、全力で刀を振るう。
簡単に屈んで躱され、また蹴り飛ばされる。
機銃部隊の車両に叩きつけられる。
装甲車がへし曲がり、氷の鎧も割れている。
蹴られたことしか分からなかった。
衝撃で身体中が痛い…
息をするのが苦しい…
「アリス!」
ママがδに斬りかかっていた。
動きが早くて全部は分からないけど、互角に見える。
オヤジもローガンさんももうすぐこちらに着くのが見える。
「ギシギシギシギシ」
妙に嫌な声を上げて、δがママから距離を置く。
「ハッ!?」
こっちに!?
刀を握る、クソッ!力が入らないが、相打ちでもやってやる!!
「ぅあぁぁぁああ!!」
ママッ!?
δと私の間にママが滑りこむ、オヤジがδの後ろから首を切ろうと振るう。
ダメだ、δに反応されている。
しかし、オヤジの刀はδの首を切り落とした。
δの腕があったはずだ。
δの腕が……
ママの胸を貫いていた……
ママが奴の腕を押さえ込んでいたのだ。
「ママ!?ママ!?今、助けるから!!」
急いで応急処置をしなきゃ!適合者なら大丈夫!回復力も普通と違うっていうし!大丈夫!
「アリス、まだ抜くな!出血量が多くなる!」
オヤジがδの腕だけ残して切り落とす。
「これで、医療班!来てくれ!!」
「アリス…」
「ママ!!」「レミー!!」
「レイ、アリスを頼むわね。アリス、あなたは生きて、愛し…てる…」
「ママぁぁー、大好きだよぉー」
「レミー…」
抱きしめあう。
涙が止まらない……
「ママぁ…」
もっと、たくさん教えて欲しかった。まだ、1本も模擬戦で勝ってない。私がランキングでママを越すって言ったじゃん…
「みんなぁぁああ!!」
メイさんの声が響く!
「たッ、大変です!またでました!!で、δです!!」
「え!?」
「は!?」
全員がホールの方を見る。ホールの傍の方にさっきまで猛威を奮っていたタイプ:δと全く同じ形のバグズクラフトがいた。
なんで、なんであんなのがもう一体!?
もう、レベル7で無傷な人はいない。オヤジやローガンさんだって骨が折れているのが見て取れるのだ。
犠牲を出してようやくだったバグズがもう一体とか…
全ての部隊に絶望が走った。
もう終わりだと…
遠目でも大怪我しているメイさんに新たなタイプ:δが襲いかかる。メイさんが氷棘の壁をを物凄い速さで生成する。大きい氷だ。高さ3mはあるし、横も10mはあるのではないだろうか。花が咲くようにδに向けて広がる。
…が、破壊される。
崩れる氷でメイさんの姿が隠れる…
氷が落ちて見えた時にはメイさんが消えていた。
ドンッ!
遅れてドスンと音がする。
少し離れた位置にメイさんの身体が落ちていた。
「ッ!?」
全員が死を覚悟し、息を飲む。
「ギシギシ」
まだ距離があるはずなのに、周りが無音のためか、やけによく聞こえる。
西の包囲網の機銃部隊が吹き飛ばしされるのが見えた。装甲車がまるでおもちゃのように中に舞う。
「はぁあ!」
オヤジが再び水鎧を纏う。
「ぬぅあ!」
ローガンさんの剣が帯電する。
私もただやられて溜まるか!!
「うぁぁぁあああ」
氷のメイルを生成する。いつの間にか傍にいた、特戦隊のみんなも各々自身を強化している。
今いる場所は機銃部隊の包囲網の一角だ。その隣の包囲場所の装甲車も吹き飛んだ。
次はここだ…
「最後までなるべくデータをとろうかのぉ、サラよ、記録は任せたぞ」
「グスっ、分かり…ました…」
δが見える。
絶対に諦めてたまるか。私はみんなに生かされたんだ!全力で抵抗してやる。
刀を構える。
ドンッ!!
私達とδの間に何かが落ちてきた。
衝撃で舞い上がった煙が舞い上がる。
ゆっくりと煙が晴れたそこには、前に見たことがある。黒髪の少年がいた……
ご覧いただきありがとうございます。
よろしければ、ブックマークやいいね評価等して頂けると、モチベーションも上がって非常に嬉しいです!




