炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -6-
「メガトンブリザード!」
メガトンファイアーと同等の氷魔法がフレデリックによって放たれ、双方の魔法は相殺され霧散してしまいました。
まるで、最初に出会ったときと同じようなシチュエーションです。
炎と氷。
このふたつは、決して相容れることはないのかもしれません。
「ミリアおばさんは大人気ないなあ。そんなにすぐ怒っているようでは更年期かと疑われてしまうよ。カルシウムはきちんと取っているのかい」
「キャッチファイア」
「う、うわああああああああ」
問題ありません。フレデリックは見事に燃え上がりました。
プスプスと黒く焦げる音も、小気味いいです。
メガトンファイアーを放ったとき、僅かな火の粉をフレデリックのシャツの隙間にしのばせておきました。それが発火魔法の詠唱とともに燃え上がったまでです。
賢いヒロイン枠として、二の手を仕込んでおくのは当然のことです。
ふたたびターフを振り返ると、すでに馬は全頭ゴール板を駆け抜けていました。
電光掲示板には1着から5着までの馬番が点滅しており、くだらない一興に身を投じているあいだに、レースは決してしまったようです。
「ブリザード! ブリザエース! モアブリザード! モアモアブリザード! ふう、ようやく鎮火できた。ひどいじゃないか。なにも本気で燃やしにくることはないだろう。わたしがきみになにをしたっていうんだ」
身に包まれたファイアを鎮火させたところは、さすが氷の大魔導師といったところかもしれませんが、氷の大魔導師である前に人を不愉快にさせる天部の才を感じます。
氷魔法の合間にはさまれたブリザエースをツッコむ元気は、今のわたしにはありません。
「おや、レースは終わったようだね。馬券はどうだったかな」
フレデリックは自身の手中にある一枚の馬券を覗き込むと、
「おお、複勝130エンが当たったぞ! さっそく払い戻しに・・・・・・む、でも待てよ、初めて買った馬券だからな、このまま記念馬券として手元に残しておくというのもありだぞ。うーむ、どうしたものか。ミリアはどうだったんだ? 当たったのかね?」
小躍りする勢いで騒いでいますが、この男はなにも理解していません。
「馬券では当てるより、儲けを優先すべきです。当てるだけなら単勝を頭数分買えばいいだけのことです。はずれを怖がっていては立派な馬券師になどなれません。一発当たったときの払い戻し金、いうなれば収支が大事であり、つまりは結局のところいっときの当たり外れなどに一喜一憂していては……」
焦げ臭い男が、ふいにわたしの手元を覗き込んできました。
「かわいそうに。外れたのだね」




