炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -7-
「戦略的勝負に出たまでのことです。どの馬がくるかは、データより導き出された確率の問題です。単にオッズの低い人気馬を買って小金を稼いでいるようでは億万長者など夢のまた夢です」
「む、それこそ、とんでもなくまずい買い方ではないのかい、ミリアがいっているのはタチの悪いギャンブラーの戯言と大差ないような気がするが」
「問題ありません。馬券は常に二段がまえで購入しています。たとえ夢馬券が当たらなかったとしても、買った馬券分は取り戻せるようワイドで百発百中の馬をおさえています。これで保険は万全です」
「……ワイドが確実なのなら、それ一点を厚く買えばいいだけの話ではないのか、もしくは三連複の二頭軸にすれば⋯⋯」
やはりこの男はさまざまなことが支離滅裂です。
競馬場には慣れていない、馬券は初めて買った、にもかかわらず馬券の買い方には長けている(競馬にうとければワイドや三連複と言われてわかるわけがありません。さらには、だれに聞くこともなく、自力でマークカードに記入して自動発売機で複勝馬券をさらりと購入しています)、父親はドゥバイーの王族でありながら大馬主。
行きつく先が見えたかと思えば、急にモヤがかかり見通しが悪くなります。点と点が繋がらないのです。
「どちらにせよ、わたしの家はそもそも億万長者なのだから、馬券でちまちま数百万エン儲けたところで、なんの意味もないのだが……」
にわかに場内がざわついています。フレデリックは嫌味なセリフをいい終える前に、さきほどレースが終わったばかりのターフを振り返りました。
ゴールを切った先に、ジョッキーが下馬しているのを確認できます。
身軽になったはずの馬は、右前脚を浮かせて、その脚が地面につかないようにしています。
「……」
厩務員が駆けつけてきて、ジョッキーから手網を手渡されると、馬は目の前に停車した馬運車に乗り込み消えていきました。
馬が見えなくなると、場内のざわめきはふたたびおだやかになりました。




