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炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -8-

 もし、あの馬の前脚が粉砕骨折のようなひどい状態なら、大人しく乗り込んだ馬運車の中から二度と出てくることはなく、日の光を見ることはありません。


 馬はそのような状態になると、どんな医学が発達した現代においても、白魔法による回復魔法をほどこしたとしても、元通り立てるようになることはありません。


 どんなに熱心に治療をしたところで、脚は回復するどころか悪化をたどり、馬はより辛い痛みにたえるだけの時間を送ることになります。


 そのような悲しい結果が明白だからこそ、回復の見込みのない馬は即、薬殺され、その命を眠るように終わらせることが唯一の慈悲であると定められています。


 そしてこれは、かねてよりまことしやかに噂されていることですが、人族は生まれ変わったら馬になると言われています。


 噂の出どころは定かではなく、本当に今眼前を走り抜けて行った馬たちや、今では世界に数少ない野生馬、観光目的や家畜として飼われている馬たち、それらが本当にもと人間なのか、彼、彼女らは言葉を話さないので噂以上のことはわかりません。


 ですが、もと人間だったとしか思えない数々の現象については、多方面から報告があがっています。


 この噂は世界中においての共通認識でありながら、成人を迎えたあかつきには、身近な大人より通知されることが、世の決まりごととして制定されています。


 近親にしろ、施設の保護者にしろ、学校の教育者にしろ、身近にいる大人はこの噂を後世に伝えることが義務であり、成人を過ぎたものはこの噂を知る権利を得ています。


 賢いヒロイン枠であるわたしは当然のことながら、大人に教わる前に書物やらなんなりから、この噂については把握していたので、成人を迎えてからびっくり仰天するようなことはありませんでした。


 大人が競馬に熱狂しているのは、賭けごとのためだけではありません。将来の自分の姿を思いながら、命懸けで走る姿を観戦せずには、応援せずにはいられない運命を背負っているからにほかなりません。


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