炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -5-
「なんのことだかさっぱりわかりません」
「ひっどい、しらばっくれる気?」
「そんなことより、大人の外見で子供らしさ全開の話し方はわきまえてください。虫酸が走ります」
「い、言い過ぎではないかな。さすがにわたしも傷つくというものだよ」
「その極端に紳士気取りな話し方も、気味が悪いので遠慮してください。フレデリックおじさん」
「フレデリックおじ、おじ、おじさんだと!? ミリア!それはないじゃないか! このような麗しき青年を前にして、おじさんとは、きみのその目は節穴なのか!?」
「そっくりそのままお返しします。あなたの目は節穴ですか。わたしの姿をご覧になったら理解できるのではないですか。中等学生の娘から見ると、成人しているフレデリックおじさんは、できることなら避けて通りたいほどのおっさん以外のなにものでもないです」
唖然。呆然。とはこのことでしょうか。
フレデリックはひとことも発せないまま、その顔を引きつらせています。
「ショックを受けるのはあとにしてください。今はそんなことよりーー」
「ど、どうやってわたしが元の姿に戻ったのか、それが知りたいというのだね」
沈んだ気を取り戻そうと、フレデリックが顔を上げたところまでは問題ありませんでしたが、論点に大幅なズレがあります。
「第5レースが始まる時間帯です。わたしたちは急いで展望デッキの馬主席に移動する必要があります」
ここは馬主エリアの中にある応接広間です。
コーヒーやジュースは飲み放題かもしれませんが、ここにいてはレースを走る馬をガラス越しにしか観戦できません。
夢を乗せて馬が走るのですから、風をこの身に感じながら観戦しないわけにはいきません。
「こんなときにレースだって!? 今はそれどころじゃ、それにミリアもどうしてそんな姿になったのか、わたしに説明して欲しいのだが……」
「わかりません。以上です」
「えっ? えっ?なんだって? 聞きまちがえたのだろうか、きみは今わからないって、まさかそう言ったのかい? きみはわたしの永遠のライバル、炎の大魔導師ともあろうおばさんなのに、そんな三行広告より短い回答じゃ……」
この男に案内を求めるのはあきらめました。馬主エリアに入った以上わたしも関係者です。おしゃべり男の相手をしているヒマがあったら、扉を開けて、ただちに展望デッキに足を踏み入れます。




