炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -4-
さすがにおどろきました。
あきらかに競馬場にもはじめて訪れたかのようなフレデリック。広大な敷地内を行ったり来たりしながらも、連れてこられたのが、五階の奥に進んだところにある馬主席だっだのだから、炎の大魔導師とてずっこけそうになりました。
「あなた、馬主だったのですか?」
「話してなかったかな。わたしではなく父君が馬主なのだよ。その息子であるわたしも関係者として馬主席で観戦ができるというわけなんだ」
「まさか、そんなことがーー」
ありきたりなセリフですが、それ以上の言葉が出てきません。
高市宮記念とスプリンターズスタークスの区別もついていなかった若造の父親が馬主? そんな罰当たりなことがあっていいのですか。
「なに、おどろくのも無理はないさ。なんといってもわたしの父君はドゥバイーの王族だからね。馬の一頭や二頭や、十頭や二十頭くらいはゆうに所有している。まあ、ほとんどの馬はドゥバイーで走らせているし、シャパン馬としてJRJに所属している馬は数頭だがね。父君も普段はドゥバイーにいて、シャパンにくるのは年に数回なんだ」
もはや、なにをいっているのか理解が追いつきません。あの、あの、あの、盛大にお漏らしをしたり(厳密には水に変化したトビーが張りついていただけなのでお漏らしではないが、ミリアの中では恥ずかしいお漏らし事件に変換されてしまっている)、小憎たらしくも賢いヒロイン枠のわたしをおばさん呼ばわりしたり、ウォークのレアモンスター交換の話もいつに間にやら煙にまこうとした、あの前髪巻き巻きの悪ガキ、
「フレデリックがドゥバイーの王族だった――?」
「あれ、ぼくの名前がフレデリックってどうして知ってるの? まだ、お互いに自己紹介はしてなかったはずだよね、ミリアおばさん!」
――いっぱい食わされました。
「炎の大魔導師が聞いてあきれるよ。思慮深さってものがぜんぜん足りないんだから。ミリアおばさんはぼくのライバルでもあるんだからね、こんなかんたんに正体がバレたりしたら困るよ、しっかりしてもらわなくちゃ」
この口ぶりです。フレデリックは、目の前にいる少女化したわたしがミリアであるということを知ったうえで、あえてなにも語らずここまで行動をともにしていた、というのがことの真相のようです。




