炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -3-
「話を戻しますが、高市宮記念は11レース15時40分スタートです。時間にはまだ余裕があります」
高市宮記念に限らず、ほとんどのG1は第11レース、15:40にスタートします。多少前後することもありますが、大幅に変更されることはありません。
今の時刻はかろうじて午前中です。
この時間帯における競馬場での過ごし方としては、未勝利戦などを観戦するのもありですし、今のうちに昼食をとったり、G1の日ならではのイベントを楽しむのも一興というものです。ターファーショップに足を運んで、G1限定グッズや、アイドルホースのぬいぐるみをチェックするのも、競馬ファンとしてはかかせないルーティンになります。
「なるほど。まだあと4時間以上もあるというわけだな。――きみはこのあと、すぐにでもご両親と合流するのかな?」
「いいえ。わたしは両親に内緒で競馬場に来ています。両親と合流するつもりはありません」
そもそも、疑惑ただようフレデリックを野放しにするわけにもいかず、多少強引にでも競馬場まで同行させたのです。ここでフレデリックと別行動をとるわけにはいきません。
しかしながら、なんといって引き止めたらいいか、すぐには名案が浮かびません。賢いヒロイン枠とはいえ、すべてにおいて万能ならそもそもお話に展開も生まれません。
「なんと、きみはまだ子供だというのに、ひとりで競馬場をうろつくというのか。子供にとって競馬場は危険な場所なのだよ。もしきみさえよかったら、今からわたしと一緒にレースを観戦しないかね?」
「問題ありません」
G1の日はいつも以上に競馬場に人があふれ、メインレースが始まるころになると、有料席でも確保していなければ、人がごった返して、レースどころか返し馬さえ人の頭越しにチラ見しなければならないほどひどく混雑します。ですがこの時間帯ならまだ、ウィナーズサークルまで出て行き、ラチ沿いに走る馬を目の前で見ることが可能になります。
高市宮記念まで軍資金は確保しておくつもりでしたが、問題ありません。
競馬新聞など買わずとも、JRJウェブ上の出馬表をひと目見るだけで、どの馬が買いなのかわたしにはわかります。
未勝利戦でも一勝クラスでもどんとこいです。




