炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -2-
「スプリンターズスタークスは何時ごろだろう。ーーん? G1高市宮記念? 今日あるのは・・・・・・スプリンターズスタークスではないのか?」
フレデリックはパドックに掲げられた横断幕を見ながら、マヌケなひと声を発しました。
この横断幕に限らず、最寄りの宙京競馬場前駅に到着して、宙京競馬場に向かうまでの一本道にも、競馬場の入り口にも、いたるところに高市宮記念のポスターが貼りめぐらされているし、ガチな裸族たちが握り締めている競馬新聞の見出しには、デカデカと大きなフォントでG1高市宮記念と見出しが掲載されています。
つまりは、どこにもスプリンターズスタークスのスの字もないことに、ようやくフレデリックは気づいたようです。
「スプリンターズスタークスは秋に開催されるスプリントG1です。本日行われるのは、今年最初のG1高市宮記念です。同じ1200mスプリントG1という意味では一緒ですが、開催時期もコース形態も異なるまったく別のレースです。国内で開催されるスプリントG1はこの2レースのみ。とはいえ、その2レースを混同している国民など、もはや国民と呼べるべき代物なのか疑わしいというもの」
「い、いやだなあ、まったく。国民と呼べるべき代物だなんて、そんな大袈裟な言い回しなんてしないでくれたまえよ。きみを宙京競馬場まで連れてきてあげたのだから、余計な勘ぐりはやめたまえ。ーーそれにしてもきみ、まだ子供だというのにずいぶん競馬にくわしいのだな。競馬にのめり込むのはたいてい大人になってからのはずだが。ご両親から、いろいろ教わったのかい?」
「そんなところです」
フレデリックの言うとおりです。
国民のだれもが成人すれば、競馬に関心を持たずにはいられなくなります。それはさだめでありながら、運命にも直結する事柄だからです。競馬を無視した人生は、送りたくても送れないものです。競馬を追うことが人生の必須事項でもあり、また責任でもあります。
それだというのに、春秋のスプリントG1をまちがえて記憶しているフレデリックは、その存在すら疑われるべき人物ということになります。




