炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -1-
慣れ親しんだ場所でありながら、血湧き肉躍る宙京競馬場。
そこに一歩足を踏み入れるやいなや、さっそく次のレースに向けてパドックを周回している馬が目に飛び込んできます。
この馬が常歩で歩いている様子を見て、その馬が買いなのか、やめといたほうがいいのかを見極める、ひとつの材料となります。
「ここが競馬場か。すごいな。街の中でこの場所だけが異様な雰囲気をまとっている」
調教で鍛え上げられ、ムキムキの胸筋とトモを発達させた馬たち。
どの馬を買おうか、片手にペンを握り締めながら、真剣な面持ちで競馬新聞と馬を交互に睨みつけている裸の大人たち(いえ、みんな当然のことながら服は着ていますが、馬券を買う金はどこからともなく工面できるというのに、己の身なりにはとんと無頓着で貧そな馬券氏たちとのことを、裸に赤ペン族とわたしが心の中で勝手に呼んでいるだけです。仮にわたしも森の中のポツンと一軒家ではなく、リンリンシチーの中に居住を構えていたとしたら、たちどころにこの者たちと同じような裸族になっていたに違いないという確固たる自信があります)。
リンリンシチー外から半分行楽気分で競馬観戦に遊びに来ているような、裸族ではない人たち。
それらすべての光景を、フレデリックはものめずらしそうにキョロキョロしながら見回しています。
この仕草からでも、彼が競馬場にまるきり馴染みがないことを見て取れます。
たとえ毎週末でないにしろ、競馬場に何度も足をはこんだ経験があれば、一日に何レースもある馬のパドック周回も、熱気に包まれた観客やお上りさん連中も、なんらめずらしい光景ではありません。
・・・・・・むろん、メインレース以外を走る馬も、未勝利戦も新馬戦も、どんな馬であろうと命懸けで走っていることにちがいはありません。
ジョッキーは職業として騎乗することを選んでいますが、馬はちがいます。どんなに一生懸命走っているように見えようとも、あくまで人族によって強制的に走らされているに過ぎません。
であればこそ、どの馬の走りにも全集中して見守るべきではありますが、とはいえ一日に走るすべての馬に注力を注ぐとなると、全レースフルゲートであった場合、1レース18頭✖︎12レース=216頭を追うことになり、さすがにそれだけの頭数に心を傾けていてはひどく疲弊してしまいます。これはといういくつかの勝負レースにだけ集中して馬券を買うのが、財布と心を守りながら馬を応援する方法だとわたしは心得ています。




