炎の大魔導師と酒場 -9-
「と、ところで、きみは早くここを出て行かないのかい? ご両親たちも行ってしまわれたのだ。子供がいつまでも酒場なんかにいる理由はないだろう。ご両親を追いかけて競馬場に行くなり、まあ興味はないかもしれないが子供が競馬場に行くのも自由だからね、馬券は買えないがね、もしくは家に帰って惰眠をむさぼるのも最高じゃないか。春のポカポカ陽気に包まれてうとうとするのは最高の贅沢だよ。特にきみは、ご両親に合わせて遅くまでここでずっと競馬の予想会にでもつきあわされていたのではないかね。眠気も限界のはずだ。それとも、子供だから体力は無限にあるのかな。だから、さあ、いつまでもこんなところで油を売っていないで、すぐにでもここを出て行って、お友だちとでも遊びに行ってはどうだね!?」
饒舌です。まるで饒舌。
フレデリックの素性は知りませんが、まず第一に舌から生まれてきた可能性が高いように推測します。
それにしても、フレデリックはさきほどから異様なまでにいらだっています。
どういうわけか、一刻も早くわたしを酒場から追い出したいのに、まったく出ていく気配がないことに腹立たしさを覚えているようです。
だがなぜ、そうまでわたしが邪魔なのか理由は不明です。
「そうですね、ではわたしは今から競馬場に向かいます」
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「よし、それがいい! 今日はG1スプリンターズスタークスだ。早く行かないといい席はみななくなってしまうぞ! さあ早く行った行った!」
「早く行きたいのはやまやまですが、わたしは子供です。競馬場への行き方がわかりません。あなたもどうせ競馬場に行くのなら、わたしも一緒に連れて行ってください」
「な・・・・・・なんだって!?」
フレデリック。あなたは大人です。
大人であるあなたが、G1が開催される競馬場に行かない選択肢などありえません。
大人はみな、競馬に夢中。これは真理であり、抗えぬ現実です。
ですがあなたは、春のスプリントG1高市宮記念を、秋のスプリントG1スプリンターズスタークスと言い間違えました。
大人として、国民として、この間違いは聞き逃せるものではありません。
仮にあなたが、競馬に心動かされることなく、興味もなく、レース名などろくに覚えていないのだとしたら、これは国家を揺るがす大事でありながら、大いなる裏切りでもあります。
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