炎の大魔導師と酒場 -6-
眼鏡、眼鏡はどこに行きましたか。
ド近眼につき、眼鏡がなければこの世は終わりです。
眼鏡、眼鏡は……ありました。
通常なら床と眼鏡が同化して、手を這わせながら物理的に眼鏡をつかまなければ、それと認識することは不可能ですが、このたびはしっかりとこの目で眼鏡を見つけることができました。
ということは、どういうことでしょうか。
答えは単純です。見えているから、眼鏡がかんたんに見つかったというわけです
ということは、どういうことでしょうか。
視力が回復しているということです。
視力が回復しているということは、
「ん? どうしてこんなところに女の子がいるのだね?」
わたしが、わたしではなくなっていることを意味します。
「⋯⋯」
「きみは、まだ中等学生だろう? 子供であるきみが、どうしてこんな酒場にひとりでいるのだね」
酒場を出ようと、ドアを開けた瞬間。ぶつかった男は背が高く、茶色がかった金色の髪に、ウェーブのかかった前髪をしており、わたしを見下ろすその眼差しはやさしそうでありながら、アホさも垣間見え、わたしには完全に見覚えのある顔をしていました。
その顔こそ、さまざまな意味で悪名高き、あのフレデリックにちがいなく、信じられないことですが、さらに彼は初めてわたしに魔道勝負を仕掛けてきたときと同じ、大人の姿をして、わたしの前に立っているのです。
そして今、大人のフレデリックは初対面の人を見るように、不思議そうな顔をして、わたしのことを見下ろしているのです。
大人のフレデリックはそこそこの高身長ではありましたが、わたしも女性にしては背が高いほうであり、そこまでフレデリックとの身長差はありませんでした。
それなのに、今これほど、あちらに見下ろされ、わたしが見上げているということは、フレデリックがわたしのことを “中等学生の女子” と呼んでいることからも推察するに、原因は不明ですが、どうやらわたしは思春期の女子の姿に変化してしまっていることはまちがいないようです。




