炎の大魔導師と酒場 -5-
窓から差し込む光に覚醒を覚えます。
いつのまにか眠ってしまっていたようです。
カウンターの上には空の酒瓶が数本に、食べ散らかされた酒のつまみが転がっています。
どうやら競馬予想をしながらたらふく飲んで食べて、潔くつぶれてしまったというのが正解でしょう。
胸のどこかに、お姉さん認定されて、気分がよくなっていたせいもあるかもしれません。
お尋ね者のフレデリック君のことなど、すっかりどうでもよく……はなっていませんが、賢いヒロイン枠の前にいち国民です。馬のこととなると熱中してしまうのも仕方ありません。
あたりを見回すと人影はなく、店内に残っているのはわたしひとりのようです。
ふたたびカウンターに視線を戻すと、走り書きのメモのようなものが空瓶の底に敷いてあるのが目に飛び込んできました。
"ミリアへ おまえが寝ちまったから、ここにいるやつら全員で競馬場行ってくるわ! がっぽり儲けてくるからな! ガッハッハッ! ロイドより“
メモを読んで、昨夜の記憶がよみがえってきました。
眼帯の男はロイドと名乗り、そのロイドと高市宮記念の必勝法を説いているうち、周りの客たちやウェイターまでわたしたちを取り囲み始め、結局そこにいた全員に馬券の買い方談義をしているうち、礼を言われ、酒やつまみをおごってもらえることになり、飲み過ぎたわたしはそのまま深い眠りに入ってしまったというオチのようです。
手痛いミスです。
今日の高市宮記念は、今年最初に行われるの春のG1レース。
街中がお祭り騒ぎになるほどの大事なレースです。
こうしてはいられません。
わたしも取り急ぎ、競馬場までかっ飛ばさなくてはいけません。
レースを見ないのは、人間をやめたも同じことです。
店を開け放したまま行くのは、多少気も引けますが、G1の前ではたいしたことではありません。そもそもウェイターも店より馬をとったのです。客であるわたしが気にすることではありません。
さっそくカウンターの椅子から降りて、店を出ようとドアを開けたところ。なにものかの障害物に鼻をぶつけ、カシャンと音を立てながら、かけていた眼鏡を床に落としてしまいました。




