炎の大魔導師と酒場 -3-
カランカラン。古いくたびれたドアでも、開くとお決まりの鐘の音が鳴ります。
フレデリック君がお尋ね者になっている以上、まずやるべきことは酒場での情報収集と相場が決まっています。
まるでどこぞの勇者にでもなったかのような気分ですが、あくまでわたしは誇り高き賢きヒロイン枠でありながら、炎の大魔導師ミリアおば……いえ、炎の大魔導師ミリアとしてここに見参しています。
自分で言うのはタダです。いえ、そもそも事実です。
このような場末の酒場に、愛想よく出迎えてくれるウェイターがいることは期待していません。
さらに、ガラの悪い客たちから、遠慮なく値踏みでもされているようかのような視線を感じますが問題ありません。完無視してカウンターに腰をかけると、こちらに見向きもしないウェイターに注文をします。
「ホットワインをください」
「ブホッ!そこは、ミルクじゃねえのかよ」
片目に眼帯をつけた、見るからに屈強そうな男が近づいてきて、ニヤニヤしながら話しかけてきました。男がなにを期待しているのか、当然ながらわたしはーー。
「理解しました。999ですね。ですが、わたしは炎の大魔道師です。あいにく冷たい飲みものは好まず、しかしながらホットミルクは飲みものとして認めていません」
ホットミルクはあの独特の匂いを受け付けることができません。
「なんか今ややこしいことを聞いたようだが、まあいいや。それよりも、炎の大魔道師だって? 」
「問題ありません。わたしは炎の大魔道師です」
眼帯の男は驚いたような目でわたしを見ていますが、自分のいうことには責任をもっています。
「はあー、こんなに若いお姉さんが炎の大魔導師とはねえ。驚いたな。てっきり大魔導師ってのは、ヨレヨレの腰の曲がったお婆さんが杖ついてるようなイメージだったからよ。ーーあん? どうしたんだ?そんなヘビが豆鉄砲を食らったような顔して」
ヘビが豆鉄砲。
ハトが豆鉄砲のいいまちがいだと思われますが、そんなことは問題ではありません。
「今、なんといいましたか」
「ハトが豆鉄砲?」
無意識か意識的にか、いい直してきました。しかしそのようなことももはや問題ではありません。
「わたしのことをなんと呼びましたか」
「お姉さん」
「形容詞もつけてください」
「若いお姉さん」
「……」
どうしたことでしょう。違和感を覚えてなりません。




