炎の大魔導師、風邪をひく -11-
「……」
ウォークのモンスター集めは、わたしにとって重要なライフワークです。
基礎体力のない魔導師につき、散歩に出て歩くという行為は、最低限のHPを維持する上で欠かせないファクターでありながら、そのうえウォークにログインすることによって、日々掻き消えそうなモチベーションを維持する役割もになっているのです。
歩きたいのか、モンスター集めをしたいのか。ニワトリが先か卵が先か。歩くからモンスターが集まるのか。モンスターを集めるために歩くのか。
否。答えは風に吹かれている。
「しょうがないペンねえ、ならフレデリックのお尋ね情報を教えてやるから、このもみじとそばはおれのもんーー」
ひょいぱく。ひょいぱく。満腹ですが、ここは無理をしてでも食べ尽くします。
「え、ちょ、ガリガリおばはん、そんながんばらくても、おれの飯……」
思いのほか下腹は出っ張りましたが、ラーメンスープと比べたら、これくらいのカロリーはあってないようなものです。
「フレデリック君がどうなろうと、知ったことではありませんが、お尋ね者として行方がしれないのなら、放っとくことはできません。どんな手を使ってでも、必ずやフレデリック君を見つけ出したなら、即刻ーー」
「即刻、なんだよペン」
トビーは、もみじとそばが食べれなくて、そのつらさのせいでこぼれでる涙を、片方の羽でこすっています。
そのような姿を見ていると、不憫で胸が痛むような、はたまたラーメンスープの恨みを晴らしてすっきりするような、複雑な感情がわたしの心を駆け巡っていきますが、今は、そのような感傷にほんろうされている場合ではありません。なんと言ったって、
「即刻、ウォークにログインさせます!」
このことが急務であるからです。
「だから、ガチ勢はいやなんだペン! バーカバーカペン!」
トビーはいまだ泣きながらやいやい言っていますが、好きなだけ泣かせておきましょう。
そもそも情報は自らの足でつかみとるものですし、なにより歩けば、新しいモンスターをゲットできます。
「今から、その張り紙とやらを確認しに、リンリンシチーに向かいます。トビーも一緒にきますか」
「ケッ。だれがこんな胸糞悪いおばはん魔導師なんかと行くかよ、ケッ」
残念ながら、トビーはやさぐれてしまいました。
「では、ペギー。一緒に行きましょうか」
「オ、オレサマはもう、食べすぎて一歩も動けない」
鳥族たるペギーは、黒い比翼の腹を仰向けに転がって、ひーひーいいながら腹をさすっています。
「わかりました。双方ともに留守番ということですが、問題ありません。わたしひとりで行ってきます」
大事なのは誰かを連れ添うことではなく、たったひとつのことを忘れないこと。今度こそはと、手のひらの中にある端末をぎゅっと握ると、その感触を強く確かめました。
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