炎の大魔導師、風邪をひく -10-
ラーメンは食べられませんでしたが、結局よく寝ることで体調は回復しました。
単に、炎の大魔導師なのにヒョウザリン山に長く滞在したり、ブラックペギーと魔法対戦したことが、それなりにこたえたのかもしれません。
「レモン、すっぱ! すっぱペン! ほんとにこれだけ? って、すっぱペーン!」
にしてもどうしてこう、嘴持ちのモンスターというだけで被っているのに、名前まで似通っていて、他にやり様があったのではと思わなくもないですが、それはそれ。とある世界線について、どうこういうつもりはありません。
「おばはん、おばはん、レモンの酸味味わってたら、塩味も欲しくなるペン。もみじとまぜそば、残ってるなら分けて欲しいなペン」
トビーは嘴をパカッと開けて、あーんとしています。
中身はラーメンスープ。見た目は、みんな大好きほぼイワトビペンギン。
わたしとて、ペンギンの愛らしさは理解しています。
覗き見ると、開いた嘴の中は、まるで最果てのように底が知れず、どこまでも空洞で、欲望のままに食物を食い漁る、無限の闇のようです。
「ミリアお姉さん、お恵みください、お願いします、といえば分けてあげてもいいですよ」
「は?」
「かんたんなことです。ミリアお姉さん、お願いします、はい、復唱してください」
「くっ、それだけは口が裂けてもいえないペン」
なにゆえに?
「そうですか。では、もみじとまぜそばのことはあきらめて――」
「そんなこと言って、後悔するのはおばはんペンよ」
トビーの目がにわかにきらりと光りました。
「最近、フレデリックが姿を見せない理由を知ってるペンか? さっきレモンを買いにリンリンシチーに行ったとき、フレデリックがお尋ね者として、町内会の掲示板に張り出されていたペンよ。もっと詳しい情報が知りたかったら、もみじとまぜそばを食わせろペン!」
「問題ありません。フレデリック君がどうなろうと、わたしの人生にはいっさい関係ありません」
「ほんとうにそうペンか? おばはんはまだ、フレデリックとウォークのレアモンスター交換をしてないんじゃないかペン? ヒョウザリン山に登ったとき、おばはんはウォークの入った端末を持っていき忘れたペンよね? フレデリックはそこで、レアモンスターをゲットしてるペンよ。フレデリックに会えなかったら、おばはんは二度とそのレアモンスターをゲットするチャンスを逃してしまうペンよ! それでも問題ないってすました顔できるペンか!?」




