炎の大魔導師、風邪をひく -8-
「正直な感想、ありがとうございます。あの鳥もみじからのみ染み出した、こっくりとしたスープ。愚直でありながら、手間隙のかかった、あの味をわかってもらえたのですね」
「あれはハマるやつペン」
といいながら、トビーは神妙な顔でうなずきました。
「でも、おれは知ってるペン。あの油ギトスープは、おばはんが特別なときに、わざわざ時間かけて煮出しているスープペン」
「よく、知っていますね」
普段はどちらかというと質素な食事を好みます。
あまり、油っこいものが食べたいとか、高価な食材が食べたいとか、そういう欲はありません。
甘いものは好きですが、それは食後に少量あれば十分ですし、なければなくても、涙を飲んで我慢できます。
「おばはんは油物を摂取すると、元気になるっていうか、ハイになるっていうか、そのときだけは体格も見違えるくらいのサイズになって、人が変わっちゃうペンからね」
ラーメンスープを飲んだくらいで、見違えるくらいのデブになるのなら、それこそ体調は悪化しています。ラーメンスープを飲む前と後で、いちいち体重計に乗ったり、鏡に姿を映したりはしませんが、ひどい言いがかりです。
が、ひとまず置いておきましょう。
「それで、わたしがラーメンスープを煮出しているのは、それを飲んで体調を整えるためだとトビーはわかっていたのに、すべて舐め尽くし平らげてしまった、というわけですね」
「(体調を整える……? あれが……? おかしなハイおばはんにはなってるけど) そこはよくわからないけど、おばはんがなにか壁に行き詰っていて、それを打破するためにラーメンスープが必要なことくらい、それなりに長く一緒にいたらわかるペンよ」
まあ、そうですね。どうにも熱っぽく、風邪の引き始めのようだったので、それらの不調を打破するために、確かにラーメンスープを煮出していました。
当然のことながら、スープができれば、それを素にラーメンを作ります。鳥のもみじのみを煮出したこってりスープは、一度食べたら二度と忘れられない味です。その汁を飛ばしながら麺をすする喜びといったら。それに勝る幸福は他に思いつきません。心酔の域に達するほどです。一日余裕で五十杯いけますし、腹が満たされれば、おのずと体調も整っていきます。




