炎の大魔導師、風邪をひく -7-
「鶏ガラ…… うぬ、鶏ガラかあ……」
トビーは遠くを見つめながら、何度もそうつぶやきました。
「床にこぼれた鶏ガラ、いえ、ラーメンスープをすべて舐めとったのですね。そのせいで腹はこのとおりポンポン、色は氷属性の魔物らしく、過剰摂取した食物の色に染まったため、オットマンに成り代わっていたという訳です」
「そうなんですね、これはもうなんでもありな設定と責められても仕方ないような気がしますが、れっきとしたイワトビーの背景あってのことなんですね」
キャラ設定の根幹を揺るがしかねないペギーの発言にも、ドキッとする必要はありません。
「問題ありません。ハクハク大図書館でトビーと出会ったとき、トビーはその姿を液体に変え、フレデリックくんのおねしょに見せかけたことがありました。ということは、ラーメンスープを飲み干して、茶色に変化するのもありです」
「そういうもんですかね」
ペギーはまだ腑に落ちないようですが、そのうちきっと慣れていくことを期待します。
「そういうもんです。ときにトビー。おまえは熱いものは食べられないのではなかったのですか。どうして煮込み中のラーメンスープを飲み干せたのですか」
色が変化することは有り得たとして、イワトビーがどうして熱いスープを飲み干せたのかは、いまだ解明できていません。
「どうしてって、床にこぼれたらすぐに冷めたってだけペンけど。脂肪分は熱するのも冷めるのも早いことくらい、炎の大魔道師じゃなくとも、大人ならだれでも知ってる常識だと思うペンけど」
「……仮にそれが常識だとして、トビーはスープを飲み干し……いえ、舐め尽くしたあと、どうしてオットマンになりすましていたのですか」
「それはーー」
トビーは話しづらそうに、わたしに背を向けました。
どうせ、脂肪分をとりすぎてお腹が痛くなってうずくまっていたとか、そんなオチなのでしょうが。
「おばはんが、ガチなラーメンスープを煮出していた理由を、知っていたからだペン。とても、全部舐め尽くした! うまかった! なんて大声では言えなかったペン!」
今、言っています。大声で。
頬を上気させながら、思いっきり、うまかったって顔してます。




