炎の大魔導師、風邪をひく -6-
いい香りがしてきました。
ペギーが紅茶をいれてくれたようです。
長い話の前には、やすらぎが添えられなければなりません。
「おかみさん、ここに紅茶置いておきますね」
「ありがとうございます。これはベルガモットティーですね。芳醇な香りがたまりません」
「ーー喜んでもらえて良かったです」
テーブルに紅茶の入ったカップとソーサーが置かれ、それを取り囲む椅子とオットマンがある中、ペギーはオットマンに腰かけようとしましたが、わたしはそれを制止し、ペギーに椅子に座ることを勧め、わたしがオットマンに腰かけました。
それから、カップをソーサーごと手にしました。
「では、ラーメンスープ消失の真相について解説していきましょ――」
まだオットマンに座って二分を経過していませんが、にわかに揺れを感じ、ひとまず膝に置いておいたカップとソーサーがガチャガチャと音を鳴らしながら傾いた拍子に、紅茶のしずくが垂れ、オットマンを濡らしました。
「お、おもー--っ! おばはん、おもっー-って、うわっ、アチッ!」
ブラウン色のプルプルに揺れていたオットマンが、なんと短い二本足で立ちあがったのです。
ソーサーとカップが揺れていたのは、オットマンの振動が伝わっていたせいです。
「おばはん、何やってんだペン! 熱いペン! 焼け死ぬペン!」
オットマンだと思われたのは、なんとブラウン色に変色したトビーだったのです。背を丸めてうずくまっていた、というわけです。
「くーっ、首も腰も痛いペン、無理な態勢してたせいでボキボキだペン」
「えっ、トビーじゃないか! いつからこんなとこに?」
「いつからって、おまえらが起きてからずっとペンよ。――ゲフッ」
「く、くさっ! トビー、ちょっ、口の中どうなってんだよ、異常に臭いぞ」
真正面からゲップを顔面に受けたペギーは、あまりの悪臭に、三白眼をしばたかせています。
わたしとしては賢いヒロイン枠につき、先んじて鼻をつまんでおいたので、問題ありません。
無論、オットマンに扮したトビーが、わたしの重さに耐えかねて立ち上がることも想定していたため、ひっくり返されないよう、前もって腰を浮かしておくことにも成功しています。
「ん? その匂いはもしかして、鳥ガラじゃないか?」
悪臭にダメージを受けながらも、ペギーは匂いをかぎ分け、その三白眼を見開きました。




