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炎の大魔導師、風邪をひく -5-

「おかみさんがラーメンスープを煮出していたということは、わかりました。それなら確かに、トビーを投げ飛ばして鍋を倒したというのに、スープがどこにもこぼれていないのは不思議ですね? それどころか、むしろ床はとっても綺麗ですし……まるでワックスを塗ったみたいにペッカペカです」


「ワックス?」


 塵芥ひとつない、磨かれたように艶っとした床。艶っとした……。


「お、おかみさん? そんなとこにしゃがみこんで、どうしたんですか?」


 指で床を触っても、ペタつきは一切ありません。かくなる上はーー。


「くんくん、くんくん」


「おかみさん!? なにして!」


 這いつくばって、床に鼻をこすり付けているわたしを見て、ペギーは狼狽えているようですが、そんなことは問題ではありません。


 問題なのは、表面はペッカペカでも、床材の奥にまで染み込みんだ、ほのかに漂ってくる芳醇な香り。これは、そう簡単に消せるものではありません。


「謎はすべて解けました。残念ですが、やはりラーメンスープは消失してしまっているようです。この恨みは、決して生涯忘れられることではありませんが、いたし方ありません……あきらめることにしましょう」


「そ、そうですね、ないものは、どうしようもないですしね(え? え? おかみさん、やっぱりトビーをぶん投げて、鍋を倒したオレサマのこと、怒ってる?)……って、えっ? 謎はすべて解けたのですか?」


「ええ。謎はすべて解けました。ことの真相、知りたいですか?」


「は、はい! 知りたいです(ちょっとガクブルなオレサマ)!」


「では、ラーメンスープが消えた謎について、解説していくことにしましょう。その前にペギー。長くなりそうなので、紅茶を淹れてもらえますか」




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