表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/82

炎の大魔導師、風邪をひく -3-

 朝。目が覚めると、黒い羽毛はまだわたしの肩口にぴたりと張り付いていました。


「あ、おはようございます、ミリアのおかみさん。熱は下がりましたか」


 羽毛の正体はペギーです。少しの身じろぎで、起こしてしまったようです。


「問題ありません。この通り熱は下がりました」


 固まった体をほぐすべく、腕を真っ直ぐあげた後、肩を回してみると、バキボキと小気味いい音が鳴ります。


 体調の整った朝は気持ちいいものです。


「良かったです、ちゃんと下がったみたいですね」


 ペギーがわたしの額に、羽毛に覆われた小さな黒い頭をくっつけ、体温を確認しています。これがヒョウザン山でイワトビー一族を恐怖に陥れていたブラックペギーの現在の姿なのですから、世の中捨てたものではありません。


「そういえば、頼んでおいた火の番はどうなりましたか」


「えっ、火の番ですか」


 ベッドから降りて台所に向かい、火にくべていた鍋の蓋を開けると、予想だにせぬ光景が目に飛び込んできました。


「中身は、どこに消えましたか?」


 鍋の中は空っぽでした。


 昨日の正午から夜八時まで鍋を火にくべておけば、それはすでに完成していたはずなのです。


「ご、ごめんなさい、おかみさん。オレサマ、オレサマ、おかみさんとの約束を守れませんでした」


 力なく肩をすぼめたペギーの三白眼が左右に泳いでいます。


 ペギーの話では、どうやら昨日の夕方には、火は消えてしまったらしいのですが、それでは中身まで喪失してしまった理由にはなりません。


 何があったのか問ただそうにも、ペギーは謝るばかりで、肝心なことを話してくれません。


 仕方ないので、奥の手を使います。


「えーん、えーん」


「お、おかみさん? どうしたんですか! ま、まさか、泣いて? もしかして、また熱が!」


「熱ではありません、えーん」


「熱じゃないなら、どうしてそんなんに泣いて......ハッ、まさか、鍋の中身がなくなったからですか? そこまで、おかみさんを悲しませる、鍋の中身とはいったい......。あっ、おかみさんのことだから、重大な魔導アイテムを作成していたところだったんですね! それなのに、オレサマときたらなんてことを! トビーをぶん投げて、鍋を火ごと倒してしまうなんて! 嗚呼っ......!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ