炎の大魔導師、風邪をひく -2-
「おばはん、いつまでも寝てねえで、起きて火の番と、あとおれの飯用意しろペン......うわっ、えっ、あつッ!」
トビーがおそらく、わたしの体をさすったのち、斜め後方にすっ飛びました。
よほど熱かったのか、わたしに触れた片翼をパタパタとあおいでいる音が聞こえてきます。
「おばはん、もしかして熱が?」
トビーがじっとベッドに転がっているだけで、身動きひとつしないわたしの顔を上から覗き込んできます。かろうじて、うっすら目を開けることはできますが、なにかものを申す余裕も、当然ながら立ち上がるすべも、今のわたしには持ち合わせていません。
「困ったペン。おばはん、完全に体調不良ペン。こんなんでもおばはんは炎の大魔導師。熱が出た日には、体まで熱々で、イワトビーのおれには触れないペン......」
「お、おかみさんが体調不良だって!? そんな!」
「あ、おまっ!何してっ?」
なんだか、突然肩口が暖かくなりました。スベスベとした柔らかな感触がぴたりと張り付いているようです。
「なにって、おかみさん温めるんだよ」
「ペギー! おまえはまた余計なことを! そんなことはする必要ないペン! むしろ熱は冷やしてあげるべきペンよ! ほらっ、はーなーれーろーぺーーーーン!」
「うるさいなあ。おかみさんの看病はオレサマがするから、トビーはあっちに行ってろ」
今度は肩口に冷気あるものが近づいてきましたが、それは一瞬のうちに遠のき、ジュワッ! バコン! と、どこかで大きな音が響いたのち、
「ギャッアアア!」
というするどい断末魔が届くと、途端にあたりは静かになりました。
「これで火の番もしなくてよくなった。最初からこうすればよかったんだな。おかみさん、もうひと晩ぐっすり寝れば、きっと明日の朝にはよくなってるだろう。それまで、オレサマがそばにいてやるからな」
片側の肩口がまた暖かくなりました。そっとさわってみると、やはり柔らかな羽毛のようでした。




