炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -17-
馬主エリアの入口にて、係の人から粛々と馬主バッジのチェックを受けて、いざゆかん。
「お嬢さん?、あなたお父さんかお母さんはどうしたの? このバッジはご両親のものでしょう?」
残念ながら、係の人に止められてしまいました。
「問題ありません。わたしがこのバッジの持ち主であり、馬主です」
といいたいところですが、そういえば現在少女化している真っ最中でした。
馬主資格を得るには複数の条件がありますが、当然のことながら成人していることが必須事項になります。
もとの炎の大魔道師ミリアであれば、大人として見た目だけはクリアできたかもしれませんが、今の姿なら1000パーセント不可能です。
22歳と14歳の頃の肌質には、悲劇的な乖離があります。
このような壊滅的なミスを犯すとは、もはや賢いヒロイン枠たる根幹が揺らぐというものです。
「もしかして、ご両親のバッジじゃないの? だとしたらあなた、一体どこでそれを手に入れてーー」
「ああ、こんなところにいたのか。探したではないか、早くこっちに来なさい」
「!? カ、カノープス様のお知り合いでしたか、大変失礼いたしました。どうぞ、お通りください」
係の人は明らかにギョッとした顔をして、わたしを馬主エリアに通しました。
「きみは、さきほど倅と一緒にいた女の子だね。倅はどこに行った、それにそのバッジ……倅のものではーー?」
係の人にあやしきわたしを通すよう命じたのは、あのちんちくりんおやじでした。
この方が、フレデリックの父君でありながら、ドゥバイーの王族であり、かつ大馬主のカノープス様。出馬表の馬主欄では何度もお目にかかっております。お会いできて光栄です。
「助けていただき感謝いたします。しかしながら話はあとにしてください。高市宮記念が始まります」
「うん? あと五分くらいは時間があるはずでは」
カノープス様はその短い首を傾げていますが、今はそんな悠長に構えていられるときではありません。
「レースもさることながら、返し馬も重要です。特にG1では、実況アナウンサーが持ち前の競馬愛をもって、馬を一頭一頭紹介します。まさに各馬たちにスポットライトを当てた晴れ舞台の瞬間です。決して見逃すわけにはいきません」
「返し馬が……そうか、各馬に向けたスポットライトか」




