炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -15-
「どうしましたか。早く行かなければレースが始まってしまいます」
フレデリックは髭の男に射抜かれたかのように微動だにしません。
「フレレリッコ、おまえも来ていたのか。どうだ、少しは馬に興味を持つようにはなったのか」
髭の男の胸にも、フレデリックと同じ馬主バッジが光っているのが見えます。
「父上、どうしてこちらに? ドゥバイーにおられるのだとばかり思っておりましたが」
「なに、今度シャパンで馬を買う予定があってな、そのために来日したのだ。ついでといったらなんだが、高市宮記念も見ていこうと思ってな」
驚きました。髭を生やしていても決してダンディとは言いえない、腹の出っ張った、ピカピカ頭の、ちんちくりんのおやじがフレデリックの父親であるなど、にわかには信じられません。
フレデリックは口は悪いものの、容姿はそれなりに整っています。高身長で太め感は皆無、茶髪のくりんくりん天パに、タレ目がちな彫りの深い顔立ちをしています。個人的好みの領域ではありませんが、一般的にはおそらく十分です。
確かに髪色や肌の色は一緒ですが、DNAとは?
フレレリッコと名を呼んでいる点も引っかかりはしますが、つっこみどころが多いため今はスルーします。
「行こう、ミリア」
フレデリックはそれ以上、ちんちくりんのおやじとは語らず、パドックの外に向かって歩き始めました。
「フレデリック」
「なんだねミリア、わたしはこれ以上父上と話す気はないのだよ。わたしの態度が悪いと戒めるのはやめてくれないか、きみはなにも知らないのだから」
「フレデリックの親子関係を戒める気などありません。進行方向は一般席であって馬主席とは反対です。早く馬主席に向かいましょう」
「……だめだ、馬主席に向かうことはできない。父上と同じ空間にいたくないのだ」
「!?」
この期に及んで馬主席という最高の観戦環境を放棄するわけにはいきません。
あと10分もすれば、レースのゲートは開いてしまいます。




