炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -14-
ゴーフォーザサミットも、高市宮記念に出走する現役馬たちも、もとは人族の生まれ変わりです。馬として生をまっとうしたあとに何が待っているのか。彼らは言葉を持たないので、だれにもわかり得ません。
もと人間だろうと、今の姿は馬です。馬の寿命は長くて30歳過ぎですが、500キロもの巨体を維持するには、膨大な手間と費用、そして広大な土地が必要になります。どうしても毎年何千頭とも生まれる競走馬が寿命をまっとうできるのは稀なことです。
であるから、人はそんな馬を前にするとき、哀愁を感じるのです。
「馬が地下道に向かったぞ。ミリア、急いで観覧席に戻ろう」
フレデリックに放ったファイアーは、幸か不幸か鎮火しています。
G1の観客動員数は数万人単位です。有料席でも確保していない限り、無数の人の頭越しにレースを拝むことなど不可能です。特に今のわたしは、身長も伸びきっていない華奢な少女の姿に化しています。
手遅れかと思いましたが、フレデリックの胸に光る馬主バッジを盗み見ました。バッジに黒い煤は付着しているものの、その輝きは焼かれることなく健在です。つまりは高市宮記念も、馬主席から悠々と観戦できるということです。
些細な苛立ちからフレデリックを焼いてしまうのは、得策ではありませんでした。せめて今日だけは細かなことに目をつぶり、彼の馬主資格を存分に利用しない手はありません。
「フレレロッコ?」
フレデリックの名を噛み倒したような発音で、ヒゲの男が呼び止めてきました。同じ馬主エリアにいたその男に対し、フレデリックは一瞬、表情を固くして立ち止まりました。
しかし、フレデリックはフレレロッコではなく関係ありません。さっさと馬主エリアの観覧席に移動しましょう。




