炎の大魔導師とわきたつ競馬場 -12-
昼食のあと、数レースを観戦すると、あっという間にメイン第11レース高市宮記の時間がやってきます。
フレデリックの胸にキランと光る馬主バッジのおかげで、パドックも馬主エリアに入することができ、馬を、ジョッキーを、すぐそばで見て、改めて感銘を受けています。
なんせ、数年ほど前に引退した元競走馬ゴーフォーザサミットが誘導馬として先導しているのを目の当たりにするのは、万感たる思いがあります。
ゴーフォーザサミットといえば、シャパンダービーのトライアルである青芽賞を1着でゴール板を駆け抜けた馬です。そのあとは7歳まで走りましたが、青芽賞のとき以上の輝きを放つことはありませんでした。
「はあ~……」
サミットの元気で立派な姿を見れば、ため息も出るというものです。
「ミリア! 8番の馬は良さそうだな、毛艶もピカピカしていて、ミリアの言うようにトモも太いぞ。強い馬は大抵トモが太いとミリアはいっていたからな、そうだろう、ミリア?」
「はあ~……」
「ミリア? 聞いてるのか? 先ほどからため息ばかりついて、どうしたというのだ」
所詮、金持ちの親に恵まれた競馬初心者のお坊ちゃんに、過去期待されていた馬がそこまで振るわず、それでもこうして、どうにか誘導馬として第二の馬生を歩めている姿を拝める感動など、どうせわかるはずがありせん。それに、
「お尋ね者の張り紙、そして児童化からの謎の回復。どうしたといういうのだ、と問いたいのはむしろわたしのほうですが」
こちらの問いには答えない輩に、まともに応対してやる口は持ち合わせていません。
「ふ、ふうん……ミ、ミリアが教えてくれないのなら、高市宮記念は8番を買おうかな。そ、そうだな、それがいい……」
フレデリックはわたしから目を逸らしながらも、視線は宙をあおぎ、かといって8番の馬にピントが合っているわけでもありません。
実に動揺を隠すのが下手な輩です。




