第九場 Truth
藤野瑠衣・・・大学一年。事故で体を失い、サイボーグに。
飯村ナオト・・大学二年。瑠衣が思いを寄せる人物だが、イケメンというわけではない。
豊田エミカ・・大学一年。瑠衣の親友で面倒見がいい。かわいい系。
神田智・・・・大学二年。ナオトのよき友人。イケメン。実はサイボーグで、松戸の助手。
松戸才蔵・・・研究所の所長。
藤野夫妻・・・文字通り瑠衣の両親。
山中昌子・・・松戸お気に入りの助手。美少女。
余談:舞台装置は二階建てを想定しています。
夕暮の公園。瑠衣、ナオト、エミカ、智が駆け込んでくる
ナオト はあ……はあ……危なかった。
瑠衣 いったい何だというんですか、先輩。
エミカ 瑠衣、あのままだったら危なかったんだよ。
瑠衣 どうして?
智 俺たちのようになってしまうからだ。
瑠衣 あなたたちの、ように?
智 その通り。
ナオトは……いや、この二人は知っているだろうが、松戸は事故死した若者をただ生き返らせたわけじゃない。
瑠衣 え?
智 奴は、俺たちサイボーグを利用しようとしていたんだ。
瑠衣 利用?
ナオト そうだよ。
松戸が生き返らせた若者は、法的にはちゃんと戸籍も人権も持っている人間として扱われる。もしそいつらが、松戸の操り人形になったらどうなると思う?
エミカ 当然、彼らは松戸のために働く。若いってことは、まだまだこれから金を稼いだりできる期間が長いってこと。そんな長期間で稼いだ金を、松戸は思い通りにできるのよ。しかもそれは、不当な搾取として扱われないの。
瑠衣 あくまで本人の意志で、所長に援助したということになる……そういうこと?
ナオト その通り。それに、俺たちサイボーグに仕事を覚えさせて、ネズミ算式で操り人形を増やしていけば、選挙だって松戸の思いのままだ。奴にわいろを渡して権力を握る政治家も出てくるだろうな。
智 その戦略を実行するのに、松戸はまずサイボーグの感情を消し、そのあと松戸を崇めてしまうようなプログラムを植え付けることにしたってわけさ。感情が消えてしまえば、なぜ尊敬するようになったのか、疑問に思うことはないからな。
瑠衣 ……じゃあ、あそこにいたサイボーグたちは、みんな……
智 全員、奴の戦略の犠牲者だ。
エミカ ……神田先輩は、瑠衣にそうなってほしくなかった。あんな奴の人形になってほしくなくて、私たちに奴のことを教えてくれたの。
瑠衣 そんな……そんなこと、あり得るわけ……
昌子 いいえ、現実ですよ。
昌子、助手モブ、二階イリ。
智 お前は!
ナオト 瑠衣は渡さない!
昌子 いいえ、その必要はありません。……ううん、なくなったんです。
エミカ どういうこと?
昌子 (前を指さし)あれを見てください。
全員前を向く。SE:爆発音。オレンジのライト。
瑠衣 ……本当に、爆発した……
エミカ うそでしょ……なんで?
智 ……! まさか、お前も
昌子 その通り。まあ、取り戻したのはごく最近ですけれど。
ナオト ……松戸は?
昌子 警察に引き渡しました。どこまで信じてくれるかは、わかりませんがね。
瑠衣 なぜ……?あなたたちは、所長を尊敬しているんでしょう?
昌子 ええ。実は私、その松戸さんのおかげで感情が戻ったんです。
瑠衣 どういうこと?
昌子 (話しながら一階に降りてくる)私は、松戸所長を尊敬していた……これが崇拝プログラムのせいでも、尊敬していたことには変わりないんです。だからこそあの人に尽くしたし、何をされても文句も言わなかった。けど次第に、大好きなあの人だからこそ、あんな実験はやめてほしい。慎ましい、平穏な生活を、送ってほしいと思うようになったんです……私と。
ナオト 君……もしかして。
昌子 でも、あの人は聞き入れてくれなかった。だから私は、せめて彼の研究を止めようとしました。このサイボーグたちの崇拝プログラムを消して、研究所を再起不能にすれば、あの人もあきらめてくれるはずだと。
エミカ 昌子ちゃん……
昌子 藤野さん。
瑠衣 はい。
昌子 忘れ物です。(ストラップを手渡す)
瑠衣 これは……
昌子 あなたも、素敵な恋愛をされているそうですね。
瑠衣 恋愛……?
昌子 そう。たとえ感情が消されていても、あなたは恋をしているはず……あなたの中の恋に気が付けば、きっとそのうち、ほかの感情も芽生えます。
瑠衣 昌子さん……
昌子 ではみなさん、私はこれで。
昌子、助手モブ、はける。
瑠衣 (ストラップを握りしめて)恋……か。
ナオト 瑠衣。
瑠衣 はい。
ナオト 智。
智 ああ。
ナオト エミカちゃん。
エミカ はい。
ナオト ……帰ろう。みんなで。
昌子ちゃん、恐ろしいガッツを見せました。




