第十場 Then
藤野瑠衣・・・大学一年。事故で体を失い、サイボーグに。
飯村ナオト・・大学二年。瑠衣が思いを寄せる人物だが、イケメンというわけではない。
豊田エミカ・・大学一年。瑠衣の親友で面倒見がいい。かわいい系。
神田智・・・・大学二年。ナオトのよき友人。イケメン。実はサイボーグで、松戸の助手。
松戸才蔵・・・研究所の所長。
藤野夫妻・・・文字通り瑠衣の両親。
山中昌子・・・松戸お気に入りの助手。美少女。
余談:舞台装置は二階建てを想定しています。
事件終了から数日後、大学のカフェテリア。
James Morrisonの「You Give Me Something」が小さく流れている
智 松戸の奴、結局逮捕されなかったみたいだな。
エミカ でも、もう研究ができなくなったことを考えたら、めでたしめでたしってとこなんでしょうか……
智 そうだよ。それにあれ以来、いろいろいいことがあったじゃないか。主に恋愛面で。(エミカの手に自分の手を重ねる)
エミカ ……(照れくさそうに)まあ、そうですね。
瑠衣、ナオト、コーヒーを持って上イリ。
エミカ あっ。(手を振りほどく)
瑠衣 (智とエミカに気づいて)こんにちは。
ナオト あれ、二人もデート?
エミカ デートだなんて……
智 “二人も”ってことは、お前らもか。
ナオト うん、そのつもりだったんだけど……
智 (察して)エミカ。一緒にその辺をぶらつかないか。
エミカ あ、そうですね。またあとでね、二人とも。
智、エミカ、下ハケ。瑠衣とナオトが席につく
ナオト あれからまだ一週間もたってないんだね。
瑠衣 ……4日と1時間4分29秒前のことです。
ナオト どう?感情は、取り戻せそう?
瑠衣 断言することはできません。でも、ここ二、三日、体の中、特に胸の奥に、変化が生じています。それを言い表す言葉はまだ見つかっていませんが。
ナオト 焦ることはないよ。少しずつでいいんだ。
瑠衣 そうですか。
ナオト うん。……そうだ、日曜に遊園地でも行こう。
瑠衣 遊園地ですか。
ナオト そう。きっと、いろんな発見があるよ。
瑠衣 そうですか。では、行きましょう。
ナオト 決まりだね。……ねえ、瑠衣。
瑠衣 なんでしょう。
ナオト 俺は、瑠衣を幸せにできているかな?
瑠衣 幸せ?
ナオト うん。俺は、瑠衣とこうしていられてすごく幸せなんだ。けど、瑠衣のことも、ちゃんと幸せにできているのかなって。
瑠衣 ……幸せという感情は、まだよくわかりません。だけど昨日、気づいたことがあります。
ナオト 何?
瑠衣 これ、見てください。
鞄からストラップを取り出す瑠衣。
ナオト これって……
瑠衣 私が感情をなくしたころ、捨てようとして捨てられなかったんです。それがなぜだか、ずっとわからなくて……昨日、やっと理解できたんです。私がどうしてそれを捨てられなかったのか。
ナオト 瑠衣……
瑠衣 私、あなたのことを考えることが多くなりました。あなたがいないときは、どうしているか気になって、皮膚の周辺が冷たい感じがします。逆にあなたにあえた時は、胸の奥の方からじわじわ温かくなって、全身が軽くなって、まるで子ウサギになったようで……捨てられなかったのも無理はありません。私は間違いなく、あなたに恋をしているんです。そして、もしかしたら、この子ウサギは“幸せ”の象徴なのかもしれません。
ナオト ……そうだよ。きっと、いや、絶対!
瑠衣 そうですか。……(笑って)それなら、よかった。
ナオト 瑠衣。……じっとして。
ナオト、瑠衣に口づける。
ナオト 好きだよ。
照明、FO。BGM、一度高まってからFO
幕
やっと終わったぜ!
最後までおつきあいくださりありがとうございました。




