第六場 Lost
藤野瑠衣・・・大学一年。事故で体を失い、サイボーグに。
飯村ナオト・・大学二年。瑠衣が思いを寄せる人物だが、イケメンというわけではない。
豊田エミカ・・大学一年。瑠衣の親友で面倒見がいい。かわいい系。
神田智・・・・大学二年。ナオトのよき友人。イケメン。実はサイボーグで、松戸の助手。
松戸才蔵・・・研究所の所長。
藤野夫妻・・・文字通り瑠衣の両親。
山中昌子・・・松戸お気に入りの助手。美少女。
余談:舞台装置は二階建てを想定しています。
松戸の研究所。
松戸 電子頭脳に欠陥が?
瑠衣 はい。前に理解できていたはずのものが、急にわからなくなっちゃって……
松戸 わからなくなった……例えば、どんなものですか?
瑠衣 リストを作ってきました。
松戸 リスト?
瑠衣 はい。書いておかないと、忘れたことすら忘れそうだったので。(手渡す)
松戸 どれどれ……ふむ……“怒り”、“悲しみ”、“嫉妬”……どれも感情を表すものですね。ところで、どうやって忘れていることに気が付いたんですか?
瑠衣 ……(うつむく)
松戸 ……まあ、いいでしょう。(書類に書き込む)前回の検査では、特に異常は見られなかったんですが……こちらでも、全力を投じて原因を突き止めますね。
瑠衣 (顔をあげて)はい!よろしくお願いします。
松戸 では、精密検査に移ります。……おい。
智 はい。
松戸 装置の準備をしておいてくれ。ちょっと取りに行くものがあるから。
智 わかりました。
松戸 準備ができ次第、この通りにして。(書類を渡す)
松戸、上ハケ。書類に目を通し、立ちすくむ智。
昌子、助手モブが検査の準備を進める。瑠衣は気絶したように眠る。
昌子 神田さん。
智 なんだい。
昌子 迷っているんですか。
智 ……そう、見えるかい。
昌子 はい。
智 今回は、これ全部消せとさ。(書類を見せる)
昌子 こんなに……ほかの実験体より、ペースがはやいですね。
智 ……あいつも、俺たちみたいになるんだな。
昌子 よいことではありませんか。我々は苦しむことも悲しむこともない。ただ彼に付き従っていれば、何も間違えないのですから。
智 ……
昌子 ……神田さん?
智 少し前なら……うなずけたかもしれないな。
昌子 ……わかっていますよね。我々は感情を……
智 ああ。……わかって、いるよ。
準備を続ける智、昌子、助手たち。
暗転。明転。二階でナオト下、瑠衣上イリ。一階には研究所の智と松戸。
ナオト 瑠衣!
瑠衣 ああ、飯村先輩。こんにちは。
ナオト どこか行ってたのか?
瑠衣 はい、研究所で検査を受けていました。
ナオト そっか。……(周りを見回してから)なあ、瑠衣。
瑠衣 はい。
ナオト 大事な話があるんだ。
瑠衣 はい、なんでしょう。
ナオト ……俺……実は……
瑠衣 はい。
ナオト 瑠衣のことが、好きだ!
瑠衣 ……私のことが、好き?
ナオト あ、ごめん、急に……でも、今言わないといけない気がして……二人っきりって、久しぶりだし。
瑠衣 ……
ナオト 俺、瑠衣と初めて会った時から、表情豊かでかわいい子だなって思ってたんだ。一緒にいて楽しいし、会えば会うほど好きになって……
瑠衣 ……楽しい?
ナオト うん。俺、そんなにかっこよくないし、いいところもそんなにないけど……その、よかったら、俺と……
瑠衣 あの
ナオト な、何?
瑠衣 好きって、なんですか。
ナオト え……
二階ストップモーション。松戸が一階のほうに戻ってくる。
智 所長
松戸 ……何だい。
智 よかったのですか、あんなに感情を消しても。
松戸 ああ。
一階ストップモーション。
ナオト あ、ごめん……気持ち悪かったよね、こんなの。
瑠衣 気持ち悪い……
ナオト ……瑠衣?
二階ストップモーション。
智 なぜ、そんなに焦るんですか。
松戸 彼女は今までの実験体よりもずっと早い段階で、自分の異変に気が付いた。だから、実験のペースも速めたんだ。
智 ……なるほど。
松戸 それがなぜだか、君は知っているんだろう。
智 はい。
一階ストップモーション。
瑠衣 ……すいません。飯村先輩のおっしゃっていることが、さっぱりわかりません。
ナオト え……だから、俺は瑠衣のことが好きって……
瑠衣 好き?……意味が分かりません。
ナオト 瑠衣?どうしたんだ?
二階ストップモーション。
智 ……恋、ですよね。
一階ストップモーション。
瑠衣 これ以上は時間の無駄です。先輩……
さようなら。
瑠衣、下に向かう。呆然と立ち尽くすナオト。
瑠衣 (ふと立ち止まり、頬に手を当てて)? 濡れている……雨も降っていないのに。
気が付いたら話しが半分以上終わっていた。こっえ。




