第二場 Cyborg
藤野瑠衣・・・大学一年。事故で体を失い、サイボーグに。
飯村ナオト・・大学二年。瑠衣が思いを寄せる人物だが、イケメンというわけではない。
豊田エミカ・・大学一年。瑠衣の親友で面倒見がいい。かわいい系。
神田智・・・・大学二年。ナオトのよき友人。イケメン。実はサイボーグで、松戸の助手。
松戸才蔵・・・研究所の所長。
藤野夫妻・・・文字通り瑠衣の両親。
山中昌子・・・松戸お気に入りの助手。美少女。
余談:舞台装置は二階建てを想定しています。
松戸の研究所。上手で藤野夫妻が松戸と話をしている。瑠衣は下手に寝ている。周りでゴーグルを装着した智を含む助手たちが瑠衣につなげられた電子機器をいじっている
瑠衣 ……ん……?
藤野母 (振り返って)!……瑠衣!
瑠衣に駆け寄る夫妻。松戸はカルテに何やら書き込みながら後ろを向く。助手たち、壁際にどく
瑠衣 お母さん……お父さん……
藤野母 よかった……気が付いたのね……!
瑠衣 あたし……(起き上がろうとする)
藤野父 ああっ、まだ起き上がったりしちゃ……!
松戸 (振り返って)いえ!大丈夫ですよ。娘さんの体に、不備はないはずですから。かえって動いてもらった方が、不具合を調べられて好都合です。
瑠衣 不備?不具合……?
藤野母 覚えてる?あなた、マンションの前でトラックに轢かれて大けがしたのよ。そのあとここに運ばれて治療を受けて、そのまま三日も眠ってたの。
瑠衣 そうだった……あれ?でも、なんともない。けがなんてしてないじゃない。
松戸 Yes, of course!ちょうどそのことについて、ご両親とお話していたところなんです。
瑠衣 あなたは?
松戸 あ、申し遅れました。わたくし松戸才蔵と申します。
瑠衣 マッド……サイトさん。
松戸 ノンノン!松戸、才蔵です。
藤野父 瑠衣、松戸さんはこの研究所の所長さんなんだぞ。偉い人なんだ。
瑠衣 へえー。そんな若いのに?
松戸 年の功より亀の甲ってことですよ。
瑠衣 トシ子ちゃんよりカメ子ちゃん……泥沼っ!?
藤野父 こら、こんなとこでボケるんじゃない!
松戸 座布団一枚!
藤野父 無理にのらなくていいんですよ!
松戸 ははは……それはさておき、本題に入りましょう。藤野瑠衣さん!
瑠衣 は、はい!
松戸 今のあなたの体について、なにが起きたのかお話ししますね。
瑠衣 はい、お願いします。
松戸 端的にいうと、ですね。あなたの体、国家のちょっとした実験体になったんです。
瑠衣 え!?どういうことです!?
松戸 詳しくご説明しましょう!ミュージック、きゃもぉん!(指ぱっちん)
BGM:クイーンオブハート(カラオケ)。助手が必要に応じてグラフ等を出す
松戸 ご存知の通り、昨今の日本は若者の死亡率が増えてるんですよ。
瑠衣 しぼう……率。
松戸 そう、死亡率。
瑠衣 メタボ?
松戸 そうそう、モズバーガーだのバクドナルドだのとアメリカの食文化が……って、そっちじゃない!死ですよ、死!DEAD OR SUICIDE!FATの話はしていません!ここ最近の若者は、自殺他殺事故死などなど、様々な理由でバッタバッタと死にまくっているんです!ほら、グラフのここ見て。すごい右肩上がりでしょう?
瑠衣 はぁ。
松戸 特に自殺者数は日に日に増える一方です!恋に破れただの社会不適合だのと理由をつけて首吊って、ああなんとも非生産的ではないですか!これを!我々は!解決せねばならない!YES,IT IS OUR JUSTICE!(ポーズをとってからせき込む)
瑠衣 大丈夫ですか!?
藤野母 だれか、水持ってきて水!
助手、バケツリレーの要領で松戸に水を渡す(バケツが望ましい)
松戸 (水を飲んで)はー……。それでね、僕は考えたわけです。何とかして、若者たちを生き返らせることができないか。で、あなたのように不慮の事故で亡くなった未来ある若者を、生き返らせるプロジェクトを開始したんですよ!まだ個人的に始めたばかりですが、口コミを介して年々利用者も増えています。ちなみにあそこの助手の方々も、あなたと同じようにして生き返ったんです。
松戸が合図すると、助手たちが一斉に敬礼する
瑠衣 うわー……軍隊みたい。
松戸 あはは、面白いたとえだ!彼らはみんな自分が生き返ったことで、私の研究に興味を持ってくれたんですよ。ね!
智 はい、その通りです。
昌子 私たち、全身全霊で、
助モブ 所長に御恩を返します!
藤野父 いい助手さんたちだ……
瑠衣 じゃあ、私がこうして元気になったのは、科学の力のおかげってこと?
松戸 そう!そうなんですよ!すごいでしょすごいですよねすごいって言ってくれてもいいんですよ?
瑠衣 わーすごーい!
松戸 もっと言って!
瑠衣 天才的!
松戸 もっと!
瑠衣 とーっても……えーと、サイエンティフィック!
松戸 ……あなた、国語と英語も苦手でしょう。
瑠衣 あ、ばれた?
松戸 ばれます。
藤野父 松戸さん、そろそろ……
松戸 あ、これは失礼。……藤野瑠衣さん。
瑠衣 はい。
松戸 あなたの体、ただ治ったというわけじゃないんです。
瑠衣 え……?
松戸 今のあなたの体はね、全部機械になっているんですよ。
BGM:FO。
瑠衣 ……機械、に?
松戸 そう。あなたのその体の中には、モーターやコードがたっぷり使ってあるんです。いわば、サイボーグですね。あなたの体のほとんどは治療をしても元に戻る見込みはなかった。それで我々はあなたのご両親の了承を得て、機械の体にあなたの脳内のデータをすべて転送したんです。
瑠衣 ……
松戸 人間の心なんて、突き詰めれば脳が提示する電気信号なんですから、最新の技術をもってすれば簡単に機械に転送できるんですよ。最初のうちは、気持ち悪いかもしれません。自分の体が機械になってしまったんですから。でも、言ってみればそれは、足の立たない人の義足みたいなものです。そんなに重く考える必要もありませんよ。
瑠衣 ……そう、ですか。
藤野母 ま、まあいいじゃないの。おかげであなたは生き返れたんだから!
藤野父 そうそう。何かをやり残して死ぬよりは、いいことだろう?
瑠衣 ……そうだね。(元気よく立ち上がり)それに、事故に遭う前とちっとも変らない。普通に動かせるんだもんね!
藤野母 その意気よ!
瑠衣 それにサイボーグって、なんかかっこよくない!?
藤野母 そうそう!かっこいいわよ、正義のヒロインみたいで!
瑠衣 正義のヒロインかー……お芝居みたいだね!
松戸 それ言っちゃだめですよ?
瑠衣 でもせっかく体作るんだったら、もうちょっと胸おっきくしてくれてもよかったのに……
藤野母 こら、整形扱いしないの。
松戸 ……元気な娘さんですね。
藤野父 ええ……それが、あの子の魅力ですから。
松戸 人によっては、自分はロボットじゃないと自殺する人もいますから、安心しました。
瑠衣 マッドさん!
松戸 松戸です。
瑠衣 もう退院してもいいの?
松戸 ええ、それだけ元気ならいいでしょう。ただ、向こう一か月間は、一週間ごとの検診が必要です。
瑠衣 はーい、わかりました!
藤野母 先生……本当に、ありがとうございました。
藤野父 なんとお礼を言ったらよいか……
松戸 いいんです。むしろ、大事な娘さんで実験をさせていただけるのですから、感謝するのはこちらですよ。
藤野母 いえ、そんな……娘を生き返らせて下さって、本当に感謝していますわ。
藤野父 お金の方も、きっちり払いますから。
瑠衣 お金?
松戸 治療代ですよ。まあ、分割で10万ってとこですかね。
瑠衣 10万……
藤野母 まあ、命の値段にしてはお安い方よ。あなたは心配しなくていいから、ね。
瑠衣 ……うん、わかった。ありがとでした、松戸さん!
松戸 はいはい。また一週間後ね。
藤野夫妻、瑠衣、上ハケ。
松戸 ……感謝、ね。
大学のカフェテリアのベーグルサンドがおいしいです。




