~Episode・1~
「あちらの方は随分賑やかですね」
カペラス家の門をくぐって直ぐに、セラフィナイトはクロサイトにそう言った。
門から邸宅へと続く道の両サイドにカペラス家の誇る大庭園がある。
「姉上のご学友が来られてるんでしょう。此処からは死角になって見えませんが、あの奥に姉上のお気に入りのガゼボがあるんですよ。姉上は其処でよくお茶会をされているので。あっ! 最近出来たばかりなので、貴方は初めてですね」
道の左側の庭園の奥を指差しながらクロサイトがそう答えた瞬間!
「きゃあぁ~!!」
という歓声が上がった。“黄色い声”とでも言うのだろうか。
「……???」
(一体あそこでレイテ殿はご学友と何をされてるんだろう?)
セラフィナイトは怪訝に思った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、門からクロサイトがセラフィナイトを連れて入ってきた時
「あらっ! クロサイト様が戻られたわ。スラっと背がお高くて、相変わらず素敵よね~」
レイテの学友の一人が嬉しそうにそう言った。
このガゼボは門からは見えないが、こちらからは一部始終がよく見える。
「そうかしら?」
そう気のない返事をするレイテに別の学友が
「もうっ、レイテったら! "そうかしら"なんて!! あんな素敵な方が双子の弟なんて羨まし過ぎるわ! 美形だし、お強いし、それに気さくでお優しいし……」
「私も同感だけれど……まあ、レイテには意中の方がいらっしゃるから仕方ないわね。あのクロサイト様のお隣にいらっしゃる方がセラフィナイト様?」
「ええ」
「此処からでははっきりお顔が見えないけれど、クロサイト様に負けずとも劣らない美形ですわね」
「あらっ! ロードより断然素敵ですわよ。ロードと違って品がおありだし。大貴族のご子息にも引けは取りませんわ!」
「まあ~レイテったらっ!」
「セラフィナイト様のお噂は聞いてますわ。 シェルタイト様の守役で剣の天才。御前試合の未成年の部で三年連続優勝されてるんですわよね。レイテ~是非、私たちをセラフィナイト様に紹介して下さいませね」
「勿論ですわ! その為に今日お招きしたんですもの。ちょっと此処で待っていて下さいな」
そう言うとレイテは、クロサイトとセラフィナイトの許へ走り始めた。
「いらっしゃいませ、セラフィナイト様」
「お久しぶりです、レイテ殿」
セラフィナイトがシェルの守役に抜擢されてからカペラス家を訪ねる回数はめっきり減っていた。
「今日は私のお友達が来られてますの」
「ええ、そのようですね」
「姉上!」
レイテの意図を察したクロサイトは、慌ててセラフィナイトとレイテの間に割って入った。
そしてセラフィナイトに背を向けると、彼に聞こえないよう小さな声で……
「今日、私がセラフィナイト殿をお連れする事を知ってて彼女たちを連れて来たんじゃないでしょうね?」
「そうよ、それがどうかして?」
クロサイトは半ば呆れ顔で
「ライバルが増えるからセラフィナイト殿は誰にも紹介しない筈じゃなかったんですか? 自慢したいお気持ちは分かりますが……」
「仕方がないじゃない! バレちゃったんだから」
「バ・ラ・し・た……の間違いでしょう? 知りませんよ、私はっ!」
「そんなこと言わずに! セラフィナイト様のご用が終わったら、必ずガゼボにお連れしてね」
「ええっ! ……私がですか!?」
「他に誰が居るのよ! 頼んだわよ、ロード!!」
「それじゃあ、セラフィナイト様。また後ほど!」
そう言ってガゼボに向かって走って行ってしまった。
クロサイトの返事を聞く気は全くない。
「はあぁぁあああ~」
クロサイトは深い溜息をついた。
★ ★ ★ ★ ★
【おまけ4コマ漫画】
この物語はクロサイト&レイテ15歳。
セラフィナイト13歳の頃のエピソードです。
レイテのフルネームは“ローザレイテ・カペラス”です。
幼い頃は泣き虫でいじめられっ子だったクロサイトを何時もレイテが護ってくれていたので、クロサイトは今でもレイテに頭が上がりません。




