第八章 二回目の討伐
「ふう……休憩~」
僕は、砂浜のパラソルの下で休憩をしていた。
「皆すごい体力あるなあ、流石兄さんが集めた凄腕の護衛人たちだ……」
僕はちょっと遊んだだけで疲れたのに、他の皆はまだ遊んでいた。ワイワイ遊ぶ皆を優しく見守る。なんだか……ちょっと前までは、僕は誰とも話してなかったのに、今ではこんなに温かい仲間ができて……思わず目頭が熱くなる。これも全部、兄さんのお陰だ。前世の最期の最期に本物の兄さんの真似をしたから、神さまがご褒美をくれたのかもしれないな……ありがとう、兄さん。
「なに悲しそうな顔してんだよ?カゲエちゃん」
ふと、声がした方を見るとグリサイユくんが、刀を持ってこっちにやってきてた。
「あ……ちょっと昔のことを思い出しててね。グリザイユくんはどうしたの?」
「ちょっと飽きたから刀の手入れでもしようかなと思ってね!」
梵天の大きい版みたいなポンポンを持って刀の手入れを始めるグリザイユくん。
「わあ……なんだか楽しそうだね!僕も少しだけやってもいい?」
「お、いいよん~!」
僕も貸してもらって、刀を優しくポンポンする。
「はは、上手上手~!狂桜、覚えとけよ~、これが私とお前がお守りするカゲエ様だぞお!」
「狂桜?」
「この刀の名前だよ!この刀は私ん家に伝わる刀でねえ、名刀なんだぜ!当主しか持つことが許されてないんだ……親と大喧嘩して家出する時に盗んできちゃったけど☆」
「ええ……」
てへ☆とするグリザイユくん。僕は、ふと思ったことを呟いた。
「……幸せだなあ」
「……え?そんなに刀好きなの?」
「あ、いや!」
否定する。
「こうやって、誰かと楽しく会話するのなんて久しぶりだから、幸せだなって思ったのを、つい言っちゃったの……!僕、大学で友達とかいなかったから……」
「ふーん?」
グリザイユくんは、優しく聞いてくれる。
「ま、別にいいんじゃない?そいつら、マジで見る目ないねえ。こんな優男を放っておくなんてさ!」
「あはは、そうかな……?」
……こういう時間が、ずっと続けばいいのに。そう呟く。グリザイユくんは、相変わらずニコニコしたその表情で僕を優しく見つめてくれる。
「ははは!その時間も、これで終わりさ!」
「!?」
「なに!?」
後ろを振り返ると、見知らぬ人が立っていた。グリザイユくんが素早く戦闘態勢に入る。切りかかろうとしたが……。
「おっと!グリサイユ!その場から私に近づくな」
「ッ!?」
グリザイユくんの足がピタリと止まる。他の皆も、異変に気付いたのか、走ってこっちに来てた。
「テメエ!誰だよ!」
ミライ・ユくんの声が聞こえる。
「その場から全員私に近づくんじゃないッ!」
すると……ピタリと、みんなの動きが止まる。……皆、どうしちゃったんだ!?すると、敵は自身の能力の解説を始めた。
「ヴァイス・ゼロ……それが私の魔法能力だ。私の言った命令を強制的に相手に従わせることができる……ズバリ!最強の能力さッ!」
「くそ……いけ!最終奥義だ!!」
グリザイユくんが、刀を敵に向かって投げた。投擲だ!しかし、
「おっとアブナイ!」
敵はいとも簡単に避けてしまった。
「私はサイレント・サイトのヤツとは違う!カゲエとかいうガキはこのまま攫っていくぞ!」
ははは!と得意げにする敵。どうしよう……!?確か、この敵は僕たちの情報を知らなすぎるのが仇になって負けたはずだけど……!?そうしたら、グリザイユくんが静かに呟いた。
「……ハッピーエンド・マニア」
すると……ビューンッ!投げた刀がグリザイユくんの手元へと元に戻る。その軌跡に、敵もいた。
「ギャー―ッ!?!?」
刀の刃が敵の腕に切り込みを入れる。
「チッ、腕持っていけなかったか」
……かなり恐ろしいこと言うなあ!グリザイユくん!
「テメエ、何した!?」
「……私の魔法能力は、ハッピーエンド・マニア。物の状態を良い状態へと復元する能力さ。壊れた壁は元通りに、落ちた武器は手元へと戻る!……おい、気抜いて良いのか?」
「ハッ!」
この間敵は気を抜いていたようで、皆の命令を解除してしまったらしい。皆がすぐそばまで来ていた。だが、
「全員私に近づくな!」
また命令をかけられたしまった……!と思いきや!?
「ミスター・スポットライト!命令するやつ間違ってない?カニにかけちゃってるぜッ!」
皆は走ってここまで来てくれた!これで一先ず安心……!
「チッ……!」
敵は、箒に乗って逃げようとした。すかさずキアロくんが追いかける。だが、
「おっと!空を飛ぶなッ!」
また命令されてしまった。すぐそこまで近づいていたが、飛べなくなってキアロくんは落ちて行ってしまう。
「ははは!これでもう追いつけないぜ!私の勝ちだな!!」
「……この翼は、飛ぶためだけのものじゃない」
「何!?」
「《喰う》ためにあるんだッ!」
羽の内側が開いて、隠された「口」が露になる。そう……キアロスクーロの羽はただの羽じゃない。内側には数千もの歯がある口が隠されているのだ!
「エンジェル・アンド・デーモン……私は、羽の大きさすらも自由に変えられる!」
羽は敵を簡単に呑み込めるほどの大きさになり、すぐさま敵を喰らってしまった。
「ま、待て!!ブラッド・ワークスの情報を教えるからっ!!」
最期にそういっていたが、キアロくんが嚙み殺してしまった……。血の一滴のしたたりもなく、何の跡形もなく敵はこの世から消えてしまった。……本当に恐ろしい羽だ。助かったはずなのに、背筋が少し震えた。僕が守られている相手は、人間じゃないんだと改めて思い知らされた。
皆が僕に集まる。
「大丈夫か!?」
「怪我はない!?」
「私が近くにいたんだから、あたぼうよッ!」
グリザイユくんが誇らしげにポーズをとる。その様子を無視して、
「怪我がなくて本当に良かった……」
とバロロさん。
「皆のお陰です!本当にありがとう、皆!」
皆に微笑むと、皆も微笑み返してくれた。
……こうして、危険なビーチ遊びは終わった。なんだか皆の絆もより一層深まった且つ、改めて皆の凄さ、そして恐ろしさを思い知ったな……!
そして、今度こそ完全外出禁止令が出されてしまったのだった……。




