第七章 最初の討伐
トロンプ君が言った作戦は、こうだ。
「まず、ミライ・ユくんが敵の前に姿を現す。恐らく敵の目的はカゲエくん。だからカゲエくんの場所を聞いてくるだろう。そこで、なんとか煽ったりして敵にスコープを覗かせて!そのタイミングで、カゲエくんは僕に合図してほしい。そしたら僕は、スコープの先を、ミライ・ユくんじゃなくて、敵の背中に《注目》させて標準を狂わせる!必中効果があるって?敵に当たらせればいいのさ!」
ミライ・ユくんは少し額に汗が出ている……。皆、緊張しながら様子を見ていた。
「……なんだよ、お前だけか。カゲエ?だったけか。あいつはどこだよ?」
「……るかよ」
「は?」
「テメエみてえなうす汚ねエ黒雑巾に、カゲエ様はやれるかよっつったんだよッ!!」
「はあ!?!?テメエ……好き勝手言わせとけばッ!!」
敵がスコープを覗く。
「今だ!トロンプくん!」
「おっけぇー!!」
パチンッ——!
トロンプくんが指パッチンする。そして、敵はライフルをぶっ放した……。銃弾は、まっすぐミライ・ユくんの方へと発射される。でも、ミライ・ユくんも僕も動じなかった。……仲間を、トロンプ君を信じているから。
ビューン!!
銃弾はミライ・ユくんの到達するギリギリで軌道を逸らし、まっすぐ敵の背中へと進行していく。
「なっ!?なぜ……」
言い終わる前に……敵の体に銃弾がヒットした。
「グハッ……!?」
敵が倒れる。床には敵から出た血がどんどん溜まっていく。思わず目を背けた。勝った。でも、嬉しいだけじゃなかった。誰かを傷つける世界に、自分も足を踏み入れた気がした……だが、いまはそれよりも、
「「「やったーっ!」」」
三人で手を合わせて喜ぶ。
「トロンプくんの作戦が上手くいったね!」
「いやあ、ミライ・ユくんの功績が大きかったよ!ミライ・ユくん、ハイタッチ!」
「いや、今はバロロさんたちと合流するのが先だ!急ぐぞ!」
おもちゃ屋を後にして、急いで日用品売り場へ向かうことに。
……敵は、僕たちが行ったあとに、一人で呟いた。
「あの方が恐れる理由が…少しだけ分かった気がした……ははっ……でも、お前らは、どうせブラッド・ワークス様からは逃げられない…!終焉が訪れる運命を、その刻が来るまではせいぜいあがくといい……!」
◇
それから僕たちは、僕たちの方へ向かいに走ってたバロロさんたちと合流して、急いで状況を説明した。バロロさんたちも、隣のエリアで銃撃があったことを聞きつけて、急いで向かってくれてたらしい。そして、僕たちはすぐさまショッピングモールを後にして帰ったのだった……。
あれから一か月後。僕は、窓の外を見ていた。
あれ以来、外に出かけるのは一切禁止。執事やメイドたちも禁止。物を頼みたいときはVenom Desireの信頼できる組員に頼んで魔法で瞬間移動で持ってきてもらうしかない。あれからというもの、宿題やゲームやサブスクやら、暇つぶしはあるものの、なんだか物悲しくてたまらない。外出を禁止される、ということは、こんなに辛いことなんだなと思った。普段外出と言えば学校にしか行かない僕が、初めて外出の大切さを学んだ。まあ良い体験にはなったけど……。
やっぱり、なんだか物悲しい。恐らく外出できなくてストレスが溜まっているんだろう。はあ……と、オシャレ用天使の輪っかの飾りを揺らしながらため息を漏らす。
それを遠くで見ていたミライ・ユ。カゲエくんは可哀そうだが、敵に襲われては身も蓋もないので外出はできない……うーん。あ!それなら……!これはどうだろう。バロロさんに許可を取りに行こう!……きっと楽しいぞ~!
◇
「……カゲエ殿」
窓から景色を見ていたら、キアロくんから突然話しかけられたので驚いた。
「あ……キアロくん、どうしたの?」
「今から出かけるぞ」
「えっ!?」
さも当たり前、みたいに言ってきたのでめちゃくちゃ驚いた。
「えっとお~、外出はダメだってミライ・ユくんにあれほど言われたような……?」
「……そのミライ・ユからの提案だ」
「えっ!?!?」
さらに驚く。ミライ・ユくん、いったい何考えて…!
そんな僕をよそに、外出の準備をするキアロくん。ミライ・ユくんと、他の皆もやってきた。
「ちょっとミライ・ユくん、一体どうしたの?」
「あーー、……今は何も聞かずに、俺たちをこの絵画の中に入れてくれない?あと、これとこれも」
ミライ・ユくんが指さしたのは、超大きい荷物。一体何をしようとしてるんだろう?でも、後で分かるから!の一点張りで、グリサイユくんも、トロンプくんも、バロロさんも、そっぽ向いて何も教えてくれない……なんだか自分だけ仲間はずれみたいで、更に嫌な気持になっちゃうなあ……。
「さあ、カゲエ殿、絵画はちゃんと持ったか?」
「うん……持ったけど、どこに行くの?」
「……秘密だ」
皆と道具を絵画に入れて、大事にリュックに抱え込む。すると。
「えっ!?ちょっ!!」
キアロくんが僕をお姫様抱っこしだしたので、めちゃくちゃ驚いた!
「今から飛ぶからな」
「は!?」
僕が何か言おうとする前に、キアロくんは僕を抱いたまま空へと飛んでってしまった……!
今日は、良く晴れてる。上空は、意外と優しい風が吹いてて、気持ちが良かった。だが……今僕は、お姫様抱っこで運ばれている。その事実がさらに僕を困惑させた。
「ちょっと恥ずかしいかな……」
「カゲエ殿は私の護衛対象。これくらい何の支障もない」
「あ、いやそうじゃなくて……」
行く先を聞いても教えてくれないし、おろしてもくれないし、僕は黙って運んでもらう事しかできないのだった……。
◇
「……海?」
しばらく飛んでいると、海が見えてきた。目的地は海のようだ。
「ああ……もう言っても良いかな。ミライ・ユ殿は、外出できなくてストレスが溜まっているカゲエ殿を見かねて、海で遊ぶ計画を立てたんだ」
「え……!」
「先ほど絵画の中に皆と一緒に入れ込んだ道具は、パラソルや椅子やビーチボールだ。魔法防水スプレーも入っていたかな。海につながる道は全部上層部に頼んで封鎖して貰ったらしい……今日はめいいっぱい遊ぼう、カゲエ殿」
「……うん!」
ミライ・ユくん、僕の為にそんなにしてくれて……!あとでちゃんとお礼を言わなくちゃ!それに、ミライ・ユくんだけじゃない。グリサイユくんも、トロンプくんも、バロロさんも、キアロくんだって、とても心配してくれてる。……僕は浅はかだったなあ、自分のことばかり考えて。
そして、ついに砂浜につくと、やっと僕をおろしてくれた。
「……ねえねえ、キアロくん」
「なんだ?」
「ありがとう!」
「……ふっ、礼ならほかの皆に言ってやれ」
そして、みんなを絵画から出して、改めて礼を言う。皆少し照れながら、良いって良いって!と言ってくれた。そしてビーチ用品を出して、遊ぶ準備をした。
「この魔法防水スプレーってなんですか?」
「これはね、かけたところが完全防水になる魔法のスプレーなんだ。水着がないから、高いけど代わりに持ってきたよ」
バロロさんにスプレーをかけてもらう。
「バロロさん、ありが……ブフッ!!」
顔に水をかけられた!犯人は……トロンプくんだ!
「へへっ、隙あり~!」
下を見ると、本当に服が濡れてない!……これは、めいいっぱい楽しめるぞ~!
「トロンプくん……やったな~!!」
「わー!逃げろー!」
トロンプくんを追いかける。その内グリサイユくんも混ざってきて、はちゃめちゃな鬼ごっこをした。ヤレヤレとミライ・ユくん、キアロくん、バロロさんも集まって、みんなで海に入った。冷たい水が手足に触れて、それをかけあって……まるで、宝物みたいな時間だった。




