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Venom Desire  作者: 永井健作
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第六章 最初の刺客

 それからしばらく皆でおしゃべりをしてる内に、朝ごはんが運ばれてきた。今回のメニューは、バタートースト・ゆで卵・生ハムキャベツサラダ・ウインナー……喫茶店のモーニングっぽい雰囲気で、どれもめちゃくちゃ美味しそう……!料理のメニューは庶民的でも、一流シェフの手にかかればどれも贅沢品に見えてしまう。皆も「美味しそう!」と言って今にもつかみかかりそうな勢いだ。メニューを考えたミライ・ユくんは誇らしげな様子だった。皆でいただきますをして、一緒に食べた。まるで、家族みたいだった。


 ◇

 それからご飯を食べ終え、後片付けを手伝った。そして、また皆でテーブルに集まる。ミライ・ユくんから今日することの発表があるからだ。

「……さて、片付けも終わったし、今日やることの発表をするかな!」

 ゴクリ。皆がミライ・ユくんに注目する。

「今日まずやることは……ズバリ、買い出しです!」

「買い出し?」

「ああ、皆で必要な物品を買いに行こう。人も増えたし、必要な物も増えるだろ?それに、皆で買い物をして親交を深めることだってできる!」

 ミライ・ユくんはグッと親指を立てる。ミライ・ユくん、流石ナイスアイデア!

「良いかもね!皆の好きな食べ物も知りたいし!」

 僕がそう言うと、他の皆も賛同した。

「めっちゃお菓子買っちゃおうぜえ〜」

「うーん、いくつか茶葉を買いたい」

「そういえば、新作のジャズCDまだ買ってなかった!」

「私はコーヒーでも買うかな」

 皆の賛同を受けて、ミライ・ユくんもにっこり微笑む。

「じゃあ、早速出かけよう!目的地は、ロイヤル・ハーバー・モールだ」

「お、良いねえ」

「久しぶりだ」

 皆がうんうん言う中、僕だけがはてなを浮かべていた。

「ろいやる・はーばー・もーる?」

 皆衝撃的な顔で僕を見る。

「カゲエくん、知らないの?街中の超巨大ショッピングモール!僕でも知ってるよ」

「あ、ええっと……あんまり街中行かなくてさあ……アハハ」

 敵とかは決めてたけど、実際に何するかは細かく決めてなかったからな……。

 そんな食い違いがありながらも、街中の超巨大ショッピングモール、ロイヤル・ハーバー・モールに行くことに。

 身支度を整える。部屋の椅子に立てかけてあるのは、兄さんたちが中にいる絵画。布にくるんで、大切にリュックの中に入れる。

「……兄さんたちのことは、ちゃんと僕が守るから」

 改めて決意を固めて、リュックを背負う。

 豪邸の入口へと向かう。他の皆も、もう準備が終わったようだ。黒い車の中からミライ・ユくんが呼んでる。

「車は俺が運転するから。バロロさん助手席で。カゲエくんは真ん中、隣にグリザイユ。後ろにキアロとトロンプ。はい、急いで乗る!」

 楽しみだなー、何買おうかなーとこれからの買い物を楽しむ声が聞こえる。僕は六人用車の真ん中の席に座った。目の前にはミライ・ユくんの後頭部が見える。……この虹色の束、本当に綺麗だよなあ。

「……カゲエくん、見過ぎ」

「へっ」

 バックミラー越しに目が合う。……バレてた。

「ミライ・ユくんの髪、すごく綺麗だよね。思わず見惚れちゃったよ!」

 僕が褒めると、ミライ・ユくんはそっぽ向いて、ふん、と照れ隠しした。

 これから楽しい買い物が始まる!

 

 ◇

「わあ……凄い……!!」

 そこは、小さな魔法都市だった。いくつもの大きな看板が宙に浮いていて、車の外にはロボットや人外の人がたくさん歩いているのが見える。

「カゲエちゃん、あんまり街中来ないの?」

 グリザイユくんがそう言う。いつの間にちゃん呼びに……。

「あーえっと、普段は大学か家しか行くとこないから……」

「そうなの?じゃあ、今日はめっちゃ楽しも〜!」

 グリザイユくんに肩をガシッと組まれる。よ、陽キャって感じ……!グリザイユくんは僕にとっては自分の子供のような立ち位置だけど、ちょっと緊張……!

「おい、あんまりはしゃぐなよ!」

 ミライ・ユくんが叱る。

「はは、ミライ・ユくん、あんまりそうカッカしないで。せっかくの皆でお買い物なんだから楽しく行こう」

 バロロさんが宥める。まあ、そうですねとミライ・ユくん。

「〜〜♪〜♪」

 トロンプくんが鼻歌を歌っている。

「トロンプくん、何聞いてるの?」

 僕が聞くと、嬉しそうに答えた。

「お、聞いちゃいますか〜!これはねえ、Midnight Blue Avenueっていう曲で、レミ・ミハルトンの最新曲で〜!」

 トロンプくんが楽しそうに語る。その様子を見て僕も思わず笑顔になる。誰かの「好き」を聞くのはこんなに心温まるものなんだな。そう感じた。

 横で聞いてたキアロくんが、

「レミ・ミハルトンなら、私も知ってる」

「え!?マジで!……なんか知ってる曲とかあったりする?」

「父がジャズ好きでな……確か、Neon Rain Serenadeだったか?あれはよく家で流していた」

「あーーーもう代表曲ですね!それは!」

 トロンプくんがついオタク口調になる。

「雨音すらも楽器に変えちゃう名曲で——」

「ほい、着いたぞ」

 どうやら車が目的地に着いたようだ。

「えーー!まだ語りたりないのに!」

「まあまあ、後でたくさん聞かせてよ、トロンプくん!」

 僕がそういうと、小さな笑顔を取り戻した。

「……へへっ、うん!」

 そして、ショッピングモールへと入る。

 目の前の光景は別の世界みたいだった。元いた世界でも街中のショッピングモールには年一くらいで来ていたけど、ここはもう何もかもが巨大だった。天井が高すぎる。知らない店が何十個も並んでいて、どこを見てもキラキラしてる。歩いてるだけなのに、なんだか自分だけ場違いな場所に来た気がした。

「ひ、広い……!」

 思わず圧巻される。

「へへへ、そうじゃろそうじゃろ。驚いたか?カゲエちゃん……」

「別にグリザイユ殿のじゃないだろう」

 グリザイユくんにキアロくんがツッコミを入れる。あはは!と笑ってしまう。……なんだか緊張がほぐれた気がした。

「……じゃ、手分けして買いに行くか。ティッシュとか衛生用品とかの日用品チームと、服とか文房具とかの生活雑貨チームに別れるぞー。」

 ミライ・ユくんが指揮を取る。それぞれじゃんけんでチーム分けすることになった。

 バロロさん率いる、グリザイユくん、キアロくんの三人の日用品チーム。

 ミライ・ユくん率いる、僕、トロンプくんの三人の生活雑貨チーム。

 それぞれ買い物が終わったら連絡することにして、早速二手に別れた。


 ◇

「おお……ここ、凄いな……!」

 しばらくミライ・ユくん、トロンプくんと話しながら歩いていると、豪華できらびやかなお店が目に入る。

「えっと……今流行りのオシャレ用天使の輪っか?」

 そんなものがあるのか……!魔法がある世界って面白いなあ!

「お、着いたな」

 ミライ・ユくんが入る。

「えっ、入るの?」

「ん?だってここ目的地の一つだし」

 トロンプくんを見ると、なんだかニコニコ微笑んでいる。そして、ミライ・ユくんと目を合わせる。え?何だろう?

「「……サプラ〜イズ!」」

 二人が僕に笑顔で手を差し伸べる。

「えっ?どういうこと……?」

「僕たちがカゲエくん護衛チームに就任した記念にとお礼に、カゲエくんにプレゼントしたいって、ミライ・ユくんがさっきカゲエくんが車に来る前に言っててさ!」

 そう言うトロンプくん。ミライ・ユくんの方を見ると……。

「……で、皆でお金集めて好きなの一個買ってあげることにしたんだ。ほら、選んでよ」

 どうぞと案内される。……ミライ・ユくん……!

「ありがとう……!誰かからプレゼントをもらうなんて、誕生日(小さい頃の)以来だな!すっごく嬉しいよ!」

「ふっ……」

「でも、すごく高そうだよ?大丈夫?」

「ああ、一番安くて五百万だね」

「そんなに!?!?」

 衝撃で口があんぐりと開いて閉まらない。

「天使の輪っかはね、持ってるだけで幸運効果がある皆の憧れの存在なんだよ!オシャレ用にもその効果はあるんだってー!」

「そ、そんなに凄いんだね……!でも、僕には勿体無いっていうか!」

「何言ってんだよ?ボスのご令弟サマには安いくらいでしょ?ほら行くぞー」

 ミライ・ユくんが僕を引っ張り、背中からはトロンプくんが押す。ちょ、もうちょっと僕の話聞いて〜〜!


「いらっしゃいませ!」

 結局、半ば強引に店に入った。

「あ。。。こんにちは」

 めっちゃ緊張しながら話す。

「あの……こう言うの初めてで……おすすめとか、人気なものってありますか?」

「おすすめは、こちらの〈ミスト・ムーン〉シリーズです!」

 店員さんが案内してくれる。

「装備者の魔法波長に合わせて色が変化します。デートにも、普段使いにも人気ですよ!」

「おお……綺麗!」

 流れるような曲線と星の軌跡を描いたデザイン。動きのある装飾が光の軌跡を表現し、幻想的で躍動感あふれる印象を受ける。二人も、

「おお!良いね!」

「似合うと思うー!」

 と言ってくれた。でも……。

「……」

 僕は、一番端にある輪っかに見惚れていた。教会のステンドグラスを思わせる神聖なデザイン。光の加護を感じさせる装飾……。グラデーションがとても綺麗で、内なる運命を感じた。

「あの、一番端のやつをお願いできますか?」

 二人が不思議そうな顔をする。

「えー?もっと派手なやつとかいっぱいあるよ!」

「あんな地味なので良いのか?」

 僕が選んだやつでも結構派手だったけど、他のが凄すぎて感覚が麻痺してるんだろう。

「僕は、あれが良いかなって!」

 早速試着することに。

「似合うかな……」

 小さく呟く。頭の上に浮かんだ瞬間、雰囲気は大きく変わった。ただのアクセサリーじゃない。まるで、暗い夜空を浮かぶ一輪の星のように。近くにいた店員さんも思わず声を漏らした。

「お客様、そのヘイロー……すごく綺麗に反応しています」

「反応?」

「はい。ヘイローは装着した人の雰囲気や魔力の色を読み取るんです。普通はここまで繊細な光り方はしません」

 僕は少し驚いたように、頭上の輪っかを見上げた。すると、輪っかに連なる小さなクリスタルが、僕の動きに合わせてゆっくり揺れた。まるで意思を持っているかのように。少しだけ自信に変わっていた。

「……これにします」

 その言葉に、店員さんも微笑む。

「ありがとうございます。きっとそのヘイローも、あなたを選んだんだと思いますよ」

 ミライ・ユくんとトロンプくんも、目をキラキラさせながら褒めてくれた。僕はもう一度鏡を見る。それは自分らしさを飾るための、小さな魔法。頭上で輝く新しいヘイローは、まるでこれからの物語の予告のように、静かに光を放っていた。


 ◇

「……いやー!それにしてもその輪っか、めっちゃ似合ってるね!」

 歩きながらトロンプくんが褒めてくれる。

「いやあ……えへへ」

「……財布は痛いけどな」

 このヘイローは、年代物で値段が一千万円した。それでもミライ・ユくんは買ってくれたけど、多分相当予定表にダメージ入っただろうな……。

「アハハハ……」

 ふと、ミライ・ユくんを見ると、赤い虫がおでこについてた。

「あ、ミライ・ユくん虫」

「え?とってとって」

 ミライ・ユくんが僕の背後を見ると……。

「!?伏せろッ!!」

「!?」

 僕とトロンプくんを地面に押し付けた。

「ちょ、何す……」

 バーンッッ!!

 銃声だ。しかも、銃弾は僕達のすぐ近くを掠めた。

「!?!?なに、が……」

「敵襲だ!!」

 キャーッ!?と言う悲鳴が辺りから聞こえる。一気に場は混乱状態だ!

「おい!こっちだ!」

 ミライ・ユくんは僕たちを近くの入り組んだおもちゃ屋へと引っ張った。

「……ッチ」

 天井の窓の上にて、舌打ちがされた。


「ミライ・ユくん!一体何が何だか……」

「シーッ!小声で話せ……さっき、天井の窓からスナイパーの姿が見えた」

「スナイパー!?(小声)」

「ああ……もう俺たちの情報を掴んだとはな……」

 大きな、巨大クマのぬいぐるみに隠れて小声で話す。

 そして……。

「おい!テメエら、隠れやがって!出てこい!命だけは助けてやるよ!」

 スナイパーが降りてきた。

「……俺の魔法能力は〈サイレント・サイト〉。必中効果があるスナイプショットが可能だ……一分やる。その間に出てこなかったら撃つぞ!」

 男は怒鳴り声を上げる。そして、一……二……と数え始めた。

「な、なんで魔法能力の説明を……?」

「その方が相手によりダメージを与えられるんだ。精神不安を煽るからね」

 トロンプくんが説明してくれたけど、それどころじゃない!

「こんな時に限って、戦闘員のグリザイユとキアロは反対方向だ。くそっ、厄介だな…」

 ミライ・ユくんが愚痴をこぼす。すると。

「えっ、僕、僕!」

 トロンプくんが自分を指さした。

「「?」」

 僕達が首を傾げると、

「……僕の魔法能力は〈ミスター・スポットライト〉。自由な場所に、相手を《注目》させることができる!」

「なんだ……攻撃力ねーじゃんか……」

 ミライ・ユくんがガッカリする。

「大丈夫……僕に絶対勝てる秘策があるから!」

 すると、ゴニョゴニョと僕たちに耳打ちで作戦を伝える。

「……なるほどな」

「だ、大丈夫かな?もし失敗したら……」

「だあいじょうぶ!僕に任せてよっ!」

 トロンプくんは笑みを浮かべた。それから作戦を再び確認して、心の準備をする。

「(大丈夫かな……もし上手くいかなかったら……)」

 僕は心配した。僕の考えた設定では、こいつには勝てはするけど、失敗するかもしれない。

 でも、仲間を信じることにした。

「五十……五十一……ん?……出てきたねえ!」

 ミライ・ユくんは、敵の目の前に姿を現していた。

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