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群治 第五話  同級生

 ガールズバーで若いネエチャンたちからいじめを受け、グループカウンセリングで知り合った早紀からは半ば監禁状態にされたというのに、群治のネエチャン好きは変わらない。


 この日も道行く若いネエチャンに卑猥な言葉をかけていた自称48歳のオヤジ・群治だが、今日のグループはちょっとまずかった。


「あれ何、もしかして中山じゃないの?」

と、そのうちの一人が言ったのだ。四人連れで西成を探索していたのは、中学の時に群治に壮絶なイジメをしていた女子たちだったのだ。


「あ、ほんと、こんなところに逃げていたのね」

 もう一人が獲物を見つけたように言った。



 四人は大学を出てそれぞれ就職をしていたのだがゴールデンウィークで一緒に大阪の中心部に出て来たのだ。しかしUSJが満員で入れず、新世界に来ればここも満員で串カツが食べられなかったというストレスが溜まっていた。そんな時に群治を見つけたのだった。


 全員、缶ビールを飲んでいたこともあって静止ができなかったという。


 これは警察が事情聴取した時に彼女たちが実際に話した内容で、それを松木弁護士が聞いてきて俺たちに話してくれたものだ。




「やば!」

群治が昔の同級生を見て逃げ出した。


たぶんそういうところが、相手を勢いづけてしまうのだ。


「待て待て、逃げなくていいだろ。俺たちもいるし」

 と俺も引き留めたのだが群治は走って逃げた。


 あまり俺とか小坂とか、ドヤの仲間が全速力で彼女たちを追いかけたら、あらぬ疑いを持たれてしまう。それであまり勢いよく追いかけるのは止めたのだが、群治はしばらく逃げたところで彼女たちに捕まったらしい。


「久しぶりにアレやらない?」

 昔、いじめの中心人物だった南が言いだしたのだそうだ。


 彼女たちの思考は十年前にタイムスリップしたみたいだった。

「解剖ね!」

 同級生仲間の林が興奮したように言った。


「マジ? それはちょっとまずいんじゃ……」

 と言った子もいたが押し切られたらしい。


 言うまでもないことだが、ここは公道であって閉鎖空間でもない。大勢の人が行きかっている場所なのだ。そういう場所でそんなことをしたら犯罪行為に当たる。(もちろん中学の時でもそうだが、当時は体育教師のゲンコだけで済んでいたのだ)


 それなのに彼女らは5月の強い陽光で、考え方がおかしくなっていたのか,つまらない考えを実行に移した。


「放せ、バカヤロウ!」

 群治は猛烈に抵抗したが、小柄な群治が、悪意ある同級生四人がかりで押さえつけられたら叶うはずがなかった。


 群治は、あまり人通りはない場所とはいえ、脇道の真ん中で文字通り身ぐるみをはがされてしまった。


 その様子をスマホを構えた無機質な目が捉え、SNSにアップしていたようだ。

「わっ女の子だった!」


 最初、観光客の女子大生たちが、西成のオヤジに絡まれたので反撃をしているのだと思い、面白そうだからとスマホ動画を撮っていたのだが、イジメにあっているのが女子大生よりも小柄な、もしかしたら女子高生? と分かった瞬間、カメラ撮影を止めた。


 それにしても群治の何が彼女たちをこれほど凶暴にするのだろう?


 その理由は判らないが、俺たちが駆け付けた時には群治は道端で、膝を抱いて小さくなっていた。


 近くで「コラー」と言う大声がした。警察ではない。


「あんたら、ウチの妹に何するのよ」と言って同級生の一人・林(彼女は群治から取り上げた服を持っていた)をボコスカと殴っていたのは、女性としては大柄な早紀だった。彼女は群治に拒絶されてからも遠巻きに見守っていたらしい。


 しばらくして警察が駆け付けてきたが、全員が逃げてしまってからでは早急な逮捕には至らなかっただろう。その意味では悪い同級生のうちの一人を取り押さえ、後に全員を逮捕できたのは早紀の活躍によるものと言ってもいい。



 群治の災難は撮影をしていた者たちが即時配信を止めてもSNS上で瞬く間に拡散した。


 特に誰かが撮った、群治が悲しそうな表情で膝を抱いて座る姿が奇跡の一枚と言われ、この写真には『大阪・西成に降臨した天使』などという大げさな副題が付けられた。


 これには『いいね』だけでなく、「あ、この子好き!」とか「守ってあげたい」などの書き込みが多く添えられ、注目度がものすごかった。


 そうなると、必ず嗅ぎつけるのが日本のマスコミだ。


 生の群治を雑誌に載せようと様々な雑誌記者がやってきた。


 勿論、群治も俺たちもその殆どを追い返したが、俺たちの中に裏切者がいたと見え、群治が一番欲しがっているものをしゃべってしまったのだった。


 横浜ベイスターズ一塁側ボックス席ペアチケットと往復の新幹線切符&その夜泊まれる高級ホテルの宿泊券セットだ。


 群治はこれと引き換えに独占取材に応じ、日頃の恰好での俺たちと並んだ写真の他、スタイリストやメイクアップアーティストが付いたアイドル顔負けのグラビア写真まで撮らせたのだった。


 結果、この町に群治目当ての若い女性や男性の観光客がやって来るようになってしまったが、若い女性の方は群治のオッサンじみた行動のおかげで、そのほとんどが幻滅して帰ってしまった。







群治 第六話 横浜編① 寿町 は4月17日午後7時ごろに貼ります。

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