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知らない間にメンバーから激重感情を抱かれて帰れないダンジョン探索録  作者: Schuld


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3-3

 連絡から数日で新人がやってくる……ということはなかった。


 空輸コストが馬鹿のように高いからだ。


 装備は基本的にコンテナ船へ放り込み、その他の交易品と十把一絡げの扱いで送り込まれてくる。私と同程度の装備ならば、同じコンテナが一つ必要なはずだ。


 傭兵は大概それに同乗させられるが、全ては涙ぐましいコストカットのため。


 まぁ、豊発の子会社であるキヨミズ・ゼネラル・セキュリティーのように金を持っている会社なら、戦利品を直通で送るための中型輸送機を持っていたりするんだが。燃料も自前の世界晶で補給すれば良いだけだからな。


 ああブルジョワジー、おおブルジョワジー。共産主義は失敗すると分かっているが、唐突に釜と槌が欲しくなってきた。


 それとくらべて、あと半月ほどで到着するらしい家の物資と人間はどうだ。現地人が便利になるだろうと、百年単位の貸し付けかつ低金利で作った――その実、自分達が使いたかっただけだろうが――立派な運河があるが、それでも二週間近くかかるのだ。


 私もタンカーにブチ込まれるのは結構キツかったな。アレには一等客室なんて贅沢な物はない。


 それに雇われ水夫共は、下手なマリーン共より喧嘩っ早いしおっかないのだ。揚陸艦待機任務でクソ狭い個室、それと二十四時間絶え間ない波の音に慣れていなければ、どこかで気が触れていたやもしれん。


 そう考えると、コンテナと一緒に送られてくる新人が可哀想だな。


 この間までのんびり本土で高校生活だろ? 耐えられるのか?


 などと思っていると、格安衛星回線プランのせいで、画面をぶん殴りたくなるほど遅かった資料のダウンロードが終わった。


 まぁ、経費削減したいのは分かるんだけどさ。人事資料と物資リストをペタバイト便で送るのってどうかと思うよ。コンプラ的にこれって大丈夫なの?


 一応二重に設定されているパスワードを打ち込んで開き、PCに搭載されたカメラの虹彩認証を通じて圧縮データを開くと、何ともペラい履歴書と経歴書が飛び込んできた。


「うぇっ、女の子!?」


 その写真を見て、私は思わず呻いた。


 ショートカットの愛らしい少女が映っている。運動によって日焼けした褐色の肌、大きなアーモンド型の瞳に小さいが肉感的な唇の配置されたシャープな輪郭。ザ・体育会系という感じだ。


 身長は160cm、体重は62kg、ここら辺の情報を知るのは悪いが、部下の健康状態把握は義務だ。しかし、クロスカントリー部だけあるな、体はかなりしっかりしてるじゃないか。カリッカリに痩せるのが流行であるから、そんなのが送られてきたら泣いてたぞ。


 ええと? 生まれは最北州、おお、試される大地じゃないか。列島転移後に再開拓が進んで農地と人口が爆増し、更に北土と近いこともあって大規模商業港と軍港が新設されて、大いに賑わった土地だ。


 その代わり、転移後も気候は厳しく、冬は凄まじいことになると聞く。なるほど、それでクロスカントリー部なんてあるのか。


「えーと、名前は佐々木・陽菜乃さんね……今年の冬で一九歳と」


 小中高と普通に卒業したのに何だってと思って志望理由を見て見ると、中々に重いことが書いてあった。


 まず、クロスカントリー部の全国大会後、後輩指導中に銃腔破裂でライフルが暴発し右目喪失。これは学校行事中ということで保険適用で治療できたが、培養移植治療とまではいかずサイバネ化したそうだ。


「えぇ、なんつー運のない……」


 その上、翌月には祖父と父が〝熊狩り〟の最中に不意討ちを受けて、四肢複数欠損の大怪我。何とか生き残ったものの、保険金では全身を〝再建〟することが難しく、禁猟期の一般務めには戻れず傷病解雇。


 働けぬ祖父と父の治療費、そして弟妹達を養うために家の財政が厳しくなり、新卒でも経歴がよければ比較的高級な傭兵に契約金目当てで流れてきましたと……。


「こーれーはー……」


 何とも言えず、私は思わず目頭をもみつつ天を仰いだ。


 いや重いな。しかも、美辞麗句を並べる定型文じゃなくて、事実そのまま羅列とか、マジで哀れに思った高校の進路指導部がガチで探したやつじゃん。


 それをまぁ我がカンパニーは……。


 人の心とかそういうのないの? なにも西方に送らんでも、内地勤務とか色々こう、あったろ。コッチに来たら里帰りも楽じゃないんだぞ。


 とりあえず厳しく仕込むが、それ以外は優しくしてやろうと決めつつ、私は送られてくる装備リストに目をやった。


「えーと? M2の一式、現代化改修キットに迷彩電磁塗料加工キット、あとは改修型FCSに……はぁ? 砲戦パック?」


 送られてくるブツは一般的なM2軽現代甲冑を傭兵が運用するにあたり、まぁ過不足のない目録であったが、同梱されている物が中々に驚きだ。


 20mm砲を背部パックパックを全換装して搭載できる、シバツジ・アーモリーの外骨格用可搬砲だ。サードパーティーの中でも堅実な造りと信頼性によって知られているが、20mmなんて骨董品も良いところだろ。


 今時、斥候用の小型ヘリでも良いとこに当てなきゃ20mmじゃ落ちんぞ。そりゃ狩るのが列島の熊なら威力過剰のいいとこだが、辛うじて外骨格を遠距離撃破可能なんて時代遅れを何で……ああ、クロスカントリー部の実績があって、目をサイバネ化しているからFSC導入が簡単だもんで、スナイパーにと単純なことを考えやがったな……?


「ならせめて30mmを寄越せ……」


 ダンジョンでも20mmなんて半端すぎる。私達がやるべき雑魚の間引きには火力過剰だ。そりゃ醜い巨人を真っ二つにできるだろうが、アレはそこまでせんでも死ぬ。


 かといって、それより格上の中型怪異に効くかは微妙だ。痛打くらいにはなるが、一撃必倒には程遠いな。


 それに、砲のメリットである長射程が活かしづらい地形も多いし、静音ユニットを同梱したとしても音で雑魚を集めすぎる。コレで何させろってんだよ……。


「いやまぁ、ないよりマシか? えーと、あとは……はぁ!? ワイヤーパック!?」


 それから他の装備を見て思わず叫んだ。


 ワイヤーパックは肩部に装備する補助機構で、高所登攀に用いるものだが、これがまぁ扱いが難しい。撃ち込んでも外骨格の重量が耐えられるかの計算は、高度な品じゃないと自動計算してくれず――言うまでもなく安物なので、そんな機能はない――熟練のカンが求められる。


 その上、巻き上げ速度をしくじったら激突して、外骨格の中で叩き付けられることになる難物だ。スイング移動なんて以ての外である。


「スナイパーだから高所を取らせたいのは分かるがっ……」


 それならせめてジャンプパックがよかったと心から思い、捻り出すような声が出た。


 いやまぁ、分かるんだよ。跳躍用の装備は別個の世界晶エンジンを積み、推進剤も補給しなきゃいけないからイニシャルコストのみならず、ランニングコストも高い。


 ただ、コツは飛び跳ねる外骨格の高速移動走法と似たようなモンだから、まだ教え方も楽だったのに……!!


「どうやって教育すっかなぁ……私は選抜射手(マークスマン)ではあるけどスナイパーじゃないぞ」


 その違いも分からないカンパニーに恨みを飛ばしつつ、私はどうにかカリキュラムを組むのであった…………。

ということで不憫な新人ちゃんです!

褐色+後輩属性&不憫! そしてやめるにやめられない事情があったので、コウヅキが「もうしらん!」って言ってなくて本当に良かったね!!

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― 新着の感想 ―
消耗品として送ってきたんですね
アレな展開がお嫌いなschuld先生なのでなんも心配なんかしてなかったけど、後輩ちゃんが女の子(不憫設定)でよかった。 最近のアレな本はそんな展開ばっかだ… コウヅキくんも後輩ちゃんも苦労はするとは思…
どんな装備にするか現場の意見も聞けよ⋯⋯ 現場のことをかなり下に見てるのがよくわかりますね
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