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【7月24日第一巻発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第二百九十三話 皇帝陛下への謁見

「間もなく、扉が開きます」


 係の人のアナウンスで、僕達は姿勢を正した。

 すると、チビスライム達は列の最後尾にぴょんぴょんと移動した。

 先程ヘルナンデス様から受けた指示なのだろうが、ここは気にしないで任せておこう。

 スラちゃんは、僕の足元にやってきた。


「王国からの使者が到着しました」


 ギギギギ。


 謁見の間の豪華な扉が、重厚な音を上げながらゆっくりと開いた。

 僕達は姿勢を正し、ビクトリア皇女様の後をついて謁見の間に入った。

 謁見の間の作りは王国の謁見の間と大して変わらず、中央に赤い絨毯が敷かれており、両サイドに帝国の貴族が並んでいた。

 絨毯の切れ端の先は一段高くなっており、玉座にはかなり若い帝国皇帝が鎮座していた。

 帝国皇帝はアーサー様とちょっと似た雰囲気で、金髪ショートカットのキリリとした超イケメンだ。


「あれが、勇猛名高いニース大将か……」

「元王国の第二王子もいるぞ」


 そして、集まった帝国貴族から拍手が送られる中、様々な声が聞かれた。

 ヘルナンデス様とルーカス様は、知名度もあるのでよく話されていた。


「あの青年が、【蒼の治癒師】か。意外と幼いな」

「【蒼の治癒師】は、本当にスライム連れなのか」

「一緒にいるのが、【蒼の治癒師】の妻か」


 そして、一番数多く聞かれたのが、僕に関する事だった。

 スラちゃんやクリスの事を言っている貴族も多いが、圧倒的に僕の噂話が多かった。

 それと共に、敵意のある視線を送るものもいた。

 僕が、帝国軍を度々打ち破ったという事になっているのだろう。


 サッ。


 ビクトリア皇女様が絨毯の切れ目で止まり、膝をついた。

 僕達も、ビクトリア皇女様の後ろに膝をついた。


「兄上、帝国からの使者をお連れいたしました」

「うむ、ご苦労」


 ビクトリア皇女様の報告を聞き、皇帝陛下は短く答えた。

 そして、皇帝陛下は視線を僕達に向けた。


「王国からの使者よ、遥々帝国まで良く参った」

「畏れ多くも皇帝陛下にお言葉を頂き、恐悦至極にございます」


 ここは、予定通りにヘルナンデス様が皇帝陛下に返事をした。

 皇帝陛下も、満足そうに頷いていた。

 ヘルナンデス様は、近衛騎士経由で皇帝陛下に陛下の親書を手渡した。

 そして、皇帝陛下が言葉を続けようとした、その時だった。


「陛下、何故王国からの使者を受け入れないとならないのですか。今は、再び王国に戦いを挑む時期ですぞ!」


 でっぷりと太ったもの凄く豪華な貴族服を着た上位貴族だと思わしき人物が、僕達を遮るかの様にビクトリア皇女様の前に立ちはだかったのです。

 更に、配下と思わしき貴族も立ちはだかった貴族の周囲に集まった。

 そして、豪華な貴族服を着た貴族は、後ろにいる僕達を睨みつけるととんでもない事を言ったのだ。


「兵よ、コイツラを捕まえて殺せ!」


 ザワザワザワ。


 豪華な貴族服を着た貴族が、いきなり僕達を指さして殺せと言ってくるとは思わなかった。

 とはいえ、周りにいるのはまともな貴族ばかりで、豪華な貴族服を着た貴族の発言を聞きかなり戸惑っていた。

 勿論、帝国兵もこんな馬鹿げた発言に従う理由がない。

 何を言っているのかと、豪華な貴族服を着た貴族を持ち場から冷たい目で見ていた。


「そなたは、常日頃から王国を倒せと言っているが、それは何故だ?」


 皇帝陛下も、努めて冷静な口調で豪華な貴族服を着た貴族に問いかけた。

 もっとも、表情はかなり怒っている様にも見えた。


「決まっているではないですか。帝国が王国を倒し、逆に賠償金を奪い取るのです。そして、帝国に過去の栄光を取り戻すのです!」


 豪華な貴族服を着た貴族は、両腕を大きく広げながら演説するように大声で皇帝陛下に答えた。

 中々の理想論だが、極めて計画性が低い。

 皇帝陛下も、その事はよく分かっていた。


「では、その壮大な計画を実行するためにどのくらいの予算を計画し、どのくらいの兵力を集めなければならないのか。そなたは、分かっているのか? ただ、余にもの申すだけでは何も動かんぞ」

「ぐっ……」


 皇帝陛下にどストレートに投げ返され、豪華な貴族服を着た貴族はあっという間に言葉に詰まった。

 結局、言うだけ言って計画や実行は全部丸投げし、自分は美味しいところを持っていこうとしたのだろう。

 皇帝陛下は、貴族の下心などお見通しだった。


 ぴょんぴょん、ぴょーん。

 すたっ、サッ。


「「「「「うん?」」」」」


 ここで、今までどこかに行っていたアクアちゃんが皇帝陛下の玉座にぴょーんと飛び乗り、皇帝陛下に敬礼をしてからメモを書いた紙を渡した。

 皇帝陛下はアクアちゃんからのメモを躊躇なく受け取ったので、もしかしたら予めこういう事があると聞かされていたのかもしれない。

 当の豪華な貴族服を着た貴族とその配下の貴族は、アクアちゃんの行動に頭の上にはてなマークを浮かべていた。


「ははは、これは滑稽だな」

「「「「「えっ……」」」」」


 すると、アクアちゃんのメモを読んだ皇帝陛下が突然大笑いをしたのです。

 豪華な貴族服を着た貴族とその配下の貴族は、余計に何が何だか分からないでいた。

 すると、皇帝陛下はある指示を出した。


「ビクトリア、コイツラを謁見に関する法違反で拘束魔法で拘束しろ! 近衛騎士は、直ぐにコイツラの身体検査を行うように」

「「「「「はっ」」」」」


 シュイン、バシッ。


「「「「「うぐっ!?」」」」」


 ビクトリア皇女様の素早い拘束魔法に、豪華な貴族服を着た貴族と配下の貴族はなすすべもなく拘束された。

 おお、以前会った時よりもビクトリア皇女様の魔力制御が向上しているよ。

 そして近衛騎士が豪華な貴族服を着た貴族の胸元から、一本の短剣を取り出した。


「謁見の間に、武器を持ち込む事自体違法行為です。しかも、これは……」

「おい、やめろ!」


 近衛騎士が押収した短剣を専用の魔導具で検査し始めると、豪華な貴族服を着た貴族は大声で制止しようとした。

 しかし、豪華な貴族服を着た貴族はガッチリと拘束されており、全く身動きが取れないのでどうにもできない。

 すると、近衛騎士が皇帝陛下に向き直り、神妙な表情で結果を報告した。


「皇帝陛下に報告いたします。この短剣には、毒が塗られております。即死まではいかなくても、十分脅威でしょう」

「報告ご苦労」


 皇帝陛下は、真剣な表情で近衛騎士からの報告を聞いた。

 そして、皇帝陛下は玉座からすくっと立ち上がった。


「貴様からは、壮大な妄想を聞くよりもこの短剣で何をしたかったのか詳しく調べないといけないな。はっきり言って、貴様の存在は帝国にとって害でしかない!」

「ぐっ、くそー!」


 皇帝陛下の厳しい非難に、豪華な貴族服を着た貴族は悔しさを口にするのが精いっぱいだった。

 そして、皇帝陛下は近衛騎士と帝国兵に指示を出した。


「この逆賊を、厳しく取り調べるのだ。屋敷などの関連先へ、直ぐに捜査に入るように!」

「「「「「はっ」」」」」


 皇帝陛下の命を受け、近衛騎士と帝国兵は豪華な貴族服を着た貴族と配下の貴族を改めて縄で拘束した。

 そして、一気に謁見の間から連れ去ったのだった。

 僕達は膝をついたまま静かに成り行きを見守っていたが、周囲の帝国貴族からかなりどよめいた声が聞こえたのだった。

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