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【7月24日第一巻発売!】毒父に物資扱いで戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートでなんでも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第二百九十四話 謁見の終わりと皇妃様と小さな男の子

 ギャーギャー騒いでいた豪華な貴族服を着た貴族が謁見の間から退場すると、謁見の間は幾分落ち着きを取り戻した。


「静かに」


 その瞬間を見逃さず、皇帝陛下が威厳のある声を発した。

 ざわめきが止まらなかった周囲の貴族が、ピタリと静かになった。

 勿論、僕達も静かに膝をついたままだ。


「帝国は、復興計画を推進している最中だ。度重なる戦争により民は飢え、国も疲弊している。そもそも、なぜ王国と戦争をしないといけなかったのか、考えた事があるのか? 結局は、主犯である亡き皇太后の見栄と発展を続ける王国への嫉妬からだ」


 皇帝陛下の話を、帝国貴族は静かに聞いていた。

 恐らく帝国が王国に戦争を仕掛けた理由は他にもあるのだろうが、今は聞かないことにしよう。


「大きな事を言って戦争を再開しようとする者もいるが、全員甘い汁をすすろうとしていた。ふざけているにも程がある。考え方を根本から改めないとならない」


 先程の豪華な貴族服を着た貴族みたいに、他にも開戦派がいるのは間違いない。

 現に、僕達を害しようとしたものがいるのも確かだ。


「王国からの使者を見てみろ。こんな酷い状態にも動揺せず、静かに事の成り行きを見守っている。諸君らは、心の胆力が全く足りん。なんとも情けないことか」


 僕達王国からの使者に動揺した醜い姿を見せたことに、帝国貴族は今更ながら気がついた。

 大物貴族っぽい人達や、行動する前のビクトリア皇女様は冷静にしていた。

 ここも、何か裏がありそうだ。


「さて、この場を仕切り直そう。改めて、王国からの使者を歓迎する。ここにいる者は、国境での戦いで活躍したものだ。特に、【蒼の治癒師】の活躍を耳にした者は多いだろう。【蒼の治癒師】は敵味方関係なく治療し、結果帝国兵の捕虜は誰一人とも死ぬことがなかった。国境での戦いで両国の極端に戦死者が少なかったのも、間違いなく【蒼の治癒師】の治療のおかげだろう」


 皇帝陛下は、何故か僕の事を話題の中心にしてきた。

 更に、多くの帝国の貴族も感心しながら僕達のことを見ていた。

 話題になりやすいとはいえ、流石に少し恥ずかしい……


「【蒼の治癒師】は、講和会議の際も小さな子どもの成長と教育を訴えた。そして、王国に設立された学園では、自ら教壇に立っている。そこで、若い者に自分の経験を惜しみなく伝えているという。元々、【蒼の治癒師】は大教会のみならずスラム街の教会でも奉仕活動を積極的に行ってきた。我が国にも、この様な国のために働く若者が一人でも多く現れて欲しい」


 皇帝陛下は僕がとても活躍しているというふうに言っているけど、多くの人が助けてくれた事実もある。

 ここにいるヘルナンデス様、ルーカス様、クリス、そしてスラちゃん達も僕を支えてくれた。


「さて、最初の挨拶はこのくらいでいいだろう。後は、今夜行われる歓迎式典でゆっくりと話そう」


 皇帝陛下は、こう言って玉座を立った。

 そして、謁見の間の袖へと退場した。

 それを合図に、多くの帝国貴族が出口へと向かった。


「皆さま、もう少しお待ち下さい」


 僕達はというと、ビクトリア皇女様の案内もあり、立ち上がってはいるがその場に留まっていた。

 チラチラとこちらを見る貴族もいるが、中には睨みつける者もいた。

 王国に何らかの敵意があるのだろう。


「では、応接室へご案内いたします」


 全ての貴族が謁見の間を後にしたところで、ビクトリア皇女様が僕達を案内してくれた。

 すっかり静かになった謁見の間を出て、僕達は帝国兵に守られながら応接室へと向かった。


 コンコン、ガチャ。


「いらっしゃーい!」

「ふふ、お迎えありがとう」


 応接室に入ると、小さな男の子が満面の笑みで僕達を出迎えてくれた。

 男の子はそのままビクトリア皇女様に抱きつき、ビクトリア皇女様も笑顔で男の子の頭を撫でていた。


「皆さま、お待ちしておりました」

「どーぞー」


 そして、ピンク色のふわふわロングヘアの小柄な女性が、ニコリとしながら僕達を出迎えてくれた。

 小柄だけど、とてもスタイルがいい。

 男の子は金髪ショートカットだけど、多分この女性が母親なのだろう。

 僕達は、使用人にソファーに案内された。


「皆さま、はじめまして。皇妃のマリアーナと申します。こちらにいるのが、息子のライアンです」

「ライアンです!」


 やはりというか、この方が皇妃様なんだ。

 ライアンちゃんは、王家のちびっ子みたいに元気いっぱいだ。

 僕達も、それぞれ自己紹介を兼ねての挨拶をした。

 うん、ライアンちゃんはスラちゃんを見て触りたいという表情だ。


「優しくするのなら、大丈夫だよ」

「わーい!」


 という事で、ライアンちゃんの相手はスラちゃんがしてくれる事に。

 普段からちびっ子の相手をしているので、初めての子でも全く問題ない。

 ライアンちゃんも、スラちゃんを抱いてとてもご機嫌だ。

 みんなでにこやかな場面を見ていると、皇妃様が僕達に頭を下げた。


「話は聞いておりましたが、我が国の貴族が皆様に大変なご無礼をいたしました。深く謝罪いたします」

「皇妃様、頭をあげて下さい。全て、皇帝陛下やレーベンス大将が対応しております。我々には、一切被害はありません」


 ヘルナンデス様が代表して対応したが、皇妃様も難しい立場だもんなあ。

 とはいっても、皇帝陛下がビシッと対応したから問題ないと思うよ。

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