第二百五十五話 スミレちゃんに会いに行こう!
ルートちゃんの妹は、スミレちゃんと名付けられた。
スミレちゃんは、ノーム準男爵家特有の濃い青色の髪の毛よりも少し紫色っぽい。
それでも、とても綺麗な髪色なのは間違いない。
スラちゃんやシロちゃん達が、交代でスミレちゃんとお母さんのセリナさんの様子を見ていた。
更にスラちゃん達は、出産祝いなどのチェックもしていた。
というのも、ここのところの事件の影響で貴族主義勢力から財務官僚のノーム準男爵家に不審な贈り物が来るのではという懸念があったからだ。
こうしてスミレちゃんが生まれてから最初の安息日に、大教会で奉仕活動が行われる事になった。
「はあ、明日から出張。温泉なし……」
「あ、あの、私も一緒ですから」
「ガウッ」
クリスのやる気が地面すれすれなほどの低空飛行で、ミュウさんやトラちゃんが一生懸命慰めてくれた。
明日から魔導船に乗って直轄領への現地調査なのだが、頑張って日程をこなさないと温泉に入ることができない。
まあ、あの子爵達とは違って僕達は温泉に入るのが仕事じゃない。
クリスには、その辺りを割り切ってもらわないと。
「あのね、僕お兄ちゃんになったんだ!」
「「「「おめでとー!」」」」
「「「「「ガウッ!」」」」」
そして、ルートちゃんは仲良しの王家のちびっ子や魔物達に元気よく報告していた。
みんなも、ルートちゃんのことを祝福していた。
なお、シルバはスミレちゃんを守ると屋敷に残っていた。
シルバも、良い意味でお兄ちゃんになった。
そんな張り切っているルートちゃんには、治療役としてレモンちゃんがついている。
他のちびっ子たちもやる気満々で、更に今日は普段は治療兵のアリシアさんもついてくれた。
クリスも何とか動き出して警備についたので、僕も頑張ってお手伝いしないと。
今日は、治療ではなく別のお手伝いをすることにした。
トントントントン、トントントントン。
治療は余程のことがなければいつものメンバーで大丈夫だし、近衛騎士やキングレオなどもがっちりと護衛してる。
そこで、炊き出しの仕込みを手伝うことにした。
ふふふ、前世のバイトの経験から包丁さばきには自信があるんだよね。
まあ、リーフちゃんやカレーちゃんみたいに魔法を使って野菜などは切らないけど。
「ケン君は、本当に何でもできるのね……」
「おー」
スーザンちゃんを抱っこしているシーリアさんが、僕をちょっと呆れ顔で見ていた。
僕としては、普通にやっているつもりなんだけどなあ。
メアリーさんも炊き出しの仕込みを手伝っているし、普通に包丁も使っていた。
その間、イリスちゃんは王太后様が面倒をみてくれた。
今日は天気もいいし、町の人も問題を起こす人はいない。
奉仕活動をしていて、とっても気が楽だ。
すると、そんな和やかな奉仕活動の場にこの二人が姿を現したのだ。
「こんにちは」
「「「「「あー、お腹が大きくなっているよ!」」」」」」
治療の現場に、ユータとスィーパーが姿を現した。
スィーパーのお腹は随分と大きくなっており、順調に赤ちゃんが育っていることがうかがえた。
ちびっ子達も、スィーパーの大きくなったお腹に大興奮だ。
勿論、治療もバッチリと行った。
「ユータ、スィーパーが出産する時の体制は整っているの?」
「おー」
ここで、イリスちゃんを抱っこしながら王太后様がユータに話しかけた。
王太后様としても、ちょっと心配しているみたいだ。
「それは大丈夫だ。ライツの嫁がみてくれる」
「そう、それならいいのよ。でも、何かあったらキチンと大教会に言うように」
「分かったっての。王太后様も心配するのは分かっているぞ」
あっ、ユータは面倒くさくなって話を切り上げたぞ。
スィーパーも、しょうがないねって表情をしていた。
「ケン、また来るぞ」
「頑張ってね」
ユータとスィーパーは、僕に軽く声をかけて大教会を後にした。
さてさて、頑張って続きをやらないと。
「ぐっ。これでは、お子様に近づけないわ」
「流石に、魔物に食べられるのは嫌よ」
あっ、チラチラとアリアちゃん達に近づけなくて悔しがっている貴族令嬢がいるぞ。
王太后様とイリスちゃんの側にはユキちゃんがいるし、シーリアさんとスーザンちゃんの側にもフォレストタイガーがついている。
でも、下心なく普通にしていれば問題ないし、現にいつも奉仕活動を手伝っている貴族令嬢は時々キングレオの頭を撫でたりしていた。
残念ながら、悔しそうにしている貴族令嬢はそういうところまで頭がまわらないのだろう。
「じゃあ、今日はこれで終わりね」
「「「「「はーい」」」」」
その後は、特に問題なく奉仕活動は終わった。
治療も全てちびっ子達とスラちゃん達でどうにかなり、僕はずっと炊き出しの仕込みを手伝った。
ちびっ子たちも、王太后に頑張ったと元気よく手を挙げた。
うん、かなりいい経験になった。
と、ここでちょっとした事件が。
「「「「スミレちゃん見に行きたい!」」」」
「「「「「ガウッ!」」」」」
「いーよー!」
何と、アリアちゃん達がスミレちゃんを見に行くと張り切っていたのだ。
ルートちゃんは気軽に返事をしたが、もうちびっ子達を止められない。
しかも、ミュウさんのところの魔物まで一緒に行くと言っているぞ。
王妃様も、こればっかりは仕方ないと苦笑していた。
先触れとして近衛騎士に行ってもらい、その間に身支度を整えた。
なお、ミュウさんの魔物もノーム準男爵家に行ったことがあるため、屋敷としても一緒に来て問題ないということになった。
「うにゅ……」
「「「「わあ、可愛い!」」」」
「「「「「グルル」」」」」
ちょうどスミレちゃんが起きたタイミングで、ちびっ子達や魔物は興味津々でベビーベッドに横になっているスミレちゃんをみていた。
シルバもキチンと赤ちゃんを守ったとルートちゃんに言っていたが、部屋の中が魔物だらけになっているぞ。
「急に押しかけて、本当に申し訳ありませんわ」
「あうー」
「こちらこそ、わざわざ来て頂き本当にありがとうございます」
イリスちゃんを抱っこしたメアリーさんとフリージアお祖母様がにこやかに挨拶し、セリナさんとシーリアさんもにこやかに話をしていた。
こうして和やかに話が進んでいたのだが、まさかの乱入者によって不穏な空気に。
ガチャ。
「失礼します。奥様、出禁になっております貴族主義の方が押しかけておりまして……」
「はあ、やはり来ましたか。私が対応します」
「「「「「ガウッ!」」」」」
あっ、ため息をついているフリージアお祖母様と共に、何故かやる気満々の魔物達が一緒に部屋を出ていっちゃった。
「「「「「ガルルルル!」」」」」
「うぎゃー!」
程なくして、応接室の方角から大きな叫び声が聞こえてきた。
どうやら、フリージアお祖母様以上に魔物達が怒ったのかもしれない。
何にせよ、スミレちゃんを愛でる人たちを怒らせると怖いことになりそうだ。
読んでいただき、誠にありがとうございます
ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
作者のモチベーションも上がります!




