第二百五十四話 ルートちゃんがお兄ちゃんに!
そんなこんなで日々が過ぎて行き、いよいよみんながお待ちかねの日がやってきた。
「ケン様、ご実家のセリナ様の陣痛が始まったと連絡がありました」
「「「おおー!」」」
朝食中にハンナおばさんが教えてくれ、アイちゃん達はとても盛り上がった。
いよいよ、セリナさんの出産が始まるんだ。
この話を聞いた途端、スラちゃん、リーフちゃん、アクアちゃん、シロちゃんが、ピーちゃん達に乗ってノーム準男爵家へと向かった。
「赤ちゃんが生まれるのには時間がかかるから、今日は予定通り王城で勉強しようね」
「「「えー!?」」」
僕の話を聞いた途端、アイちゃん達は聞いていないよと大ブーイングだ。
でも、こればっかりは仕方ない。
午前中の勉強を終えたらノーム準男爵家へ行っていいので、それまで頑張って勉強しましょう。
クリスはトラちゃんと一緒に軍の施設へと向かうので、僕はどよーんとしているアイちゃん達と共に王城へと向かった。
「ははは、それでしょげていたのか」
王城の勉強部屋でたまたまアーサー様と会い、アイちゃん達がしょぼーんしていた理由に納得していた。
なお、アーサー様の采配で、アイちゃん達は二時間しっかりと勉強をすればノーム準男爵家に行けることになった。
その話を聞いた瞬間、アイちゃん達はやる気を取り戻したのだった。
僕も、アイちゃん達に負けないように頑張らないと。
さっそく、今日の仕事に取り掛かったのだった。
「だー!」
「はいはい、抱っこですね」
昼食の時間、僕は何故かイリスちゃんを抱っこしていた。
もしかしたら、この前スーザンちゃんを抱っこしたからかなと思ったりして。
でも、アリアちゃん達が小さい頃も、僕はたくさん抱っこしていたんだよなあ。
「ふふ、ケン君は本当に小さい子に好かれるわね」
メアリーさんも、僕がイリスちゃんを抱っこする姿にニンマリとしていた。
僕は、そのままイリスちゃんにご飯を食べさせた。
アリアちゃん達も、一生懸命野菜を食べていた。
「ケンは、昔から子どもに好かれるな。イリスよ、こっちに来るとよい」
「やー、あぐあぐあぐ」
イリスちゃんは、陛下が広げた手を無視して僕が抱っこしたまま離乳食を食べていた。
陛下、手を広げたままそんなに恨めしい目を僕に向けなくても……
ほら、固まっている陛下を見て、王妃様とメアリーさんがクスクスとしていますよ。
「おばーさま、赤ちゃんっていつ生まれるかな?」
「どうだろうね。もうそろそろよ」
「そーなんだ!」
一足先に昼食を食べ終えたアリアちゃんは、王太后様に色々質問していた。
何というか、今日は赤ちゃんの話題で持ちきりになりそうだ。
こうして昼食を食べ終え、午後の勤務時間になった。
カリカリ、ペラペラ。
カリカリ、ペラペラ。
えーっと、これがこれであれがあれで……
うーん、最近貴族主義勢力の勢いが弱くなったのもあり、業務効率がかなり上がった。
その分、たくさんの書類がきている。
確認するのも、とても大変だ。
あれ?
この申請はなんだろう。
「アーサー様、備品の大量発注の申請です。ご存知ですか?」
「うーん、この量は多いな。部署も聞いたことがない」
アーサー様も、僕から書類を受け取って不思議そうに見ていた。
「直轄領に、こんな大きな施設……あっ、この前捕まったあの連中が絡んでいるかもしれないぞ」
陛下も来て書類を手にしたが、ふとある事に気がついた。
温泉街のある直轄領に視察に行こうとした子爵などが捕まったが、確かに場所は同じだ。
しかも、申請日が子爵が捕まる前で申請場所も同じだ。
直ぐ様現地の代官、駐留軍の指揮官、温泉街の代表に確認を取ったが、公的には何も決まっていない。
だが、温泉街の代表が、とある貴族が保養地建設計画をしていたと連絡した。
「確か、奴らはまだ聴取中だな。この件を問いただすように、軍に指示を出す。併せて、奴らの職場にも確認させよう」
陛下が直ぐに指示をし、直ぐに職場で驚きの事実が判明した。
何と、子爵達は実在する職場の職員名と上司の名前を勝手に使って書類を書いていた。
言うまでもなく、書類偽造だ。
しかも、実際の人と筆跡が全く違うという。
ただし、金額が大きいからアーサー様のところまで書類が来たんだ。
「奴らの視察は、思ったよりも大きい事件になりそうだな。どこかのタイミングで、ケンを現地に派遣する」
うおーい、まさかの出張ですか!?
でも、陛下の目は本気だった。
僕は、思わずガクリとしてしまったのだった。
こうして午後の勤務も終わり、僕は王城からノーム準男爵家へと向かった。
すると、ニコニコ顔のルートちゃん達が出迎えてくれた。
「ケンおにーちゃん、僕ね、お兄ちゃんになったんだよ!」
「「「赤ちゃん!」」」
ニコニコなルーちゃん曰く、どうもお昼前に赤ちゃんが生まれた様だ。
ルートちゃん達は、僕の手を引っ張って急いでセリナさんと赤ちゃんがいる部屋へと案内した。
コンコン。
「おかーさま、ケンお兄ちゃんが来たよ!」
「あら、そうなのね」
ガチャ。
部屋に入ると、セリナさんはベッドに腰掛けてフリージアお祖母様と先にノーム準男爵家に着いていたクリスと和やかに談笑していた。
そして、ベビーベッドには生まれたての赤ちゃんが寝ており、トラちゃんとピーちゃん達が興味深そうに赤ちゃんを覗き込んでいた。
「あのね、いもーとなんだよ!」
「ルートちゃん、良かったね」
「うん!」
ルートちゃんは、嬉しいのかニコニコが止まりません。
でも、僕も何となく気持ちは分かるなぁ。
アイちゃん達も、赤ちゃんにとても興味津々だ。
きっと、三人にとっても良い教育の機会になるかもしれない。
こうして、ノーム準男爵家に新しい命が誕生した。
なお、エレンお祖父様とゴライオンさんは、早速出産祝いを持ってきた来客とにこやかに対応していたのだった。
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